■ベーシックインカムを肯定したいために「低消費」を礼賛する本。がっかり。
お金についての本ということだけど、全体的に今後の社会保障のあり方を論じた本という感じ。
概要にあるような「お金っていったい何なのか?」「お金はこれからの世の中でどう変わっていくのか?」みたいな話はないです。
いわく、これからの日本は少子高齢化によって低賃金化に歯止めがかからなくなる(老人が働きだすと時給100円になるんですってよ)。
そうなると若者はみんな貧乏になる(みんなで泥棒はじめるんだって)。
だから、むしろこれからみんな貧乏になる前提で、時給100円のためにあくせく働かず、むしろお金を使わないような人生の楽しみ方を見つけよう。
同時に、食うに困らないようベーシックインカムを導入しよう(これが主題)。そんでその制度が導入されるまでは生活保護で食いつなげ。ほらこれでお金の心配がなくなった。
というのが本書の主な論旨。どうよ?
著者は、とにかくベーシックインカム大好きなのね。そんで、ベーシックインカムの貧しい暮らしを肯定したいのか、「お金なんてあったって幸せじゃないです」どころか「お金はどこまであったって不幸になるだけ」みたいな資本批判の話がずっと続く。
とにかく著者が消費を嫌悪しているのはわかった。
じゃあお金稼ぎなんかどうでもいいとなるのかと思えば、1章まるまる「これからのお金はこう稼ごう」がテーマだから。何が言いたいのかよくわからん。
(もっとも、そこの章は教育投資しろとか、なるべく似たような供給の少ないところで勝負しろとか、この本の中ではマトモな部分)。
そうかと思えば、自分がいかにお金に執着していないかという話をしたり、やれソシャゲに金使うのはバカ、宝くじ買うのはバカ、●●に金使うのはバカという「消費罵倒」。それにお決まりの「幸せだの不幸だのは他人と比較することで生まれるんです、だからみんなと比べないようにしましょう」だからな。
要するに僕らはベーシックインカムを元手にして、消費しない、さらに自分の生活を他人と比べない、「清貧」な生活を送りなさいってことのようだ。
こういうのは大体、経済成長とかを否定するような本によく書いてある。
でもその一方で、本書の冒頭で、パリの一風堂のラーメンが1杯1500円するという話が出てくる。
そこでひろゆきは、【1杯1,500円でも、美味しくて良いものだから需要があるんだ、みんな「安かろう悪かろう」ではなく、こういう価値のあるものにお金を出しませんか】という。
俺はそこだけ読んで、この本はデフレを脱却するためにもっと質の良いものにお金払っていきましょう、という本だと思ってちょっと嬉しかったのね。
でも次の項目から「お金で買えるものなんて大したものじゃない」って言って消費批判だもの。
でもさあ、そんな1杯1500円のラーメンを「これはいいものだ」なんて言って食うのこそ、まさに「お金を持った人にできる消費の幸せ」なんだと思うんだよね。
ベーシックインカムで清貧な生活をしましょうってなったら、1,500円のラーメンどころか日高屋に列が出来る。
そんで、そもそも本人がそういう事を世界でも有数の物価高のパリに暮らしてる人が言うんだから説得力もない。これに限らず「清貧」みたいな話をする人が4畳半のエアコンも無い部屋で楽しくやっている、っていうことあんまり無いよね。
「人と比べない幸せ」というのもよく聞くけど、無理だと思うなあ。
著者自身が一生懸命広げてきたインターネットサービスとか、グローバル化で、俺たちはイヤでも毎日のように、世界の人はあんな生活してますって情報が入ってくる。
そのうえで、やっぱり自分以外の人みんなが新型のiPhone使ってたら欲しくなると思うし、そうでないとゆくゆくは技術的に連絡が取れなくなっちゃったりすると思うんだよね。俺はiPhoneなんていらん、公衆電話がある!って頑張るのは自由だけど就活とか無理じゃん。
「江戸時代の人から見たら、僕たちみんなものすごく豊かだと思うんです。ほとんどユートピアなんです」とも書いてあるけど、それを言うなら、江戸時代の人だって室町時代を振り返って「俺たちは十分に豊かだなあ。もう発達しなくていいわ」と思ったろう。
でもホントにそうしていたら、今ごろきっと日本人はまだ刀を持ってて、対してアメリカ人はiPhone持ってるだろうね。
人と比べない幸せってのは、本気でそれでも良いと言えることじゃないかと俺は思う。
俺はいやだなー。でもそれってやっぱり永遠に満足できない不幸な人なんでしょうかね。それなら俺は不満でいい。ソクラテスだか誰だかも言ってるじゃん、満足する豚より不満な人間がいいって。
その他、家賃が高いから田舎に住もうと言ってみたり(その20ページ後で、今度は「都市の人口が増えないと未来はない」とか言ってる)、面白いコンテンツはお金じゃなくて情熱が生み出すんだと言ったり(俺は無給だとFF14は作らないと思うなあ)、お金の本と言いつつ、そのお金の哲学が思いつきのような話なので、読む価値を感じない。
ひろゆきは自分で喋るときは経済自由主義的な良い話をするんだけど、それがこんな本になってしまうのはがっかり。
それでも、お金はいくらあっても不安なことに変わりはない、でもベーシックインカムがあるとどんな境遇になっても飢えて死ぬことはなくなる、これがイノベーションも呼ぶしブラック企業も淘汰できるし、雇用流動化して少子化も解決するぜ・・・などと、社会制度の話題については別に変なことを言っているわけじゃないので、斜め読み出来るファンの人はいいんじゃないかな。
きちんとお金のこと学ぼうとしてる人は読まんでいいです。
■ちょっと冗長な、お金の仕組みや金融政策についての教科書
「経済学・統計学を丸裸にする」シリーズの著者が、1冊まるまるお金の働きについて書いた本。
「経済学を丸裸にする」では1項目でしかなかった、お金ってそもそも何だとか、中央銀行は何してるんだとか、インフレってなんだとか、本書ではそれに特化して500ページ弱に渡って語ってくれます。
長い(笑)
多国間で為替がどう決まるのか、金融緩和が物価に与える影響だとか、リーマンショックの時にバーナンキがどんな活躍をしたとか・・・同著者の前著「経済学をまる裸にする」ではもっと分かりやすく、簡潔にまとまっていて良かったのが、ページ数が増えることによってより冗長になった感じがする(訳者の山形さんはこちらの方がお気に入りなんだそうだけど)。
更に言うと著者のジョークも前著のほうがキレがあったかな。FRB(アメリカの中央銀行)を映画化したらイエレン(その総裁の女性)役はアンジェリーナ・ジョリーだとかどうでもええわ笑
でも、本書が有する価値(過去の「まる裸」シリーズにはない)を挙げると、日本のことがかなりたくさん書いてある(1章まるまる)。それはもちろん「デフレで地獄を味わっている悲惨な国」の事例として。
ゴホンと言えば龍角散、インフレ地獄といえばジンバブエ、デフレ地獄といえば日本ってくらいな感じで出てくる。
また、そこから脱出せんがために、現在の黒田日銀で行われている緩和策も(肯定的に)紹介されていたりして、ほぼ全てがアメリカの話だった「まる裸」に比べ、日本人が読んでも想像付きやすいようにはなってるかな。
また、冗長とは書いたものの、金本位制の仕組みだとか、貨幣の本質的な価値とか、信用創造の機能だとか、サラッとやるとなんか曖昧になっちゃいそうな部分についてこれでもかって説明してくれるから、何となく知ってるけどきちんと整理したいという人は読んで損しないと思う。
そうではなくサラっと経済全般との関係も合わせてお金を理解したいんだって人は、「経済学をまる裸にする」の方をオススメする。