今日は健康診断だった。
会社では夏と冬に健康診断を実施している。
年に1回なので、そのどちらかに申込むことになる。
夏季の募集時に、面倒くさがって、ぐずぐずして申し込まないでいると、強制的に冬期での健診に回される。
社外に止められたレントゲン車の前で、寒空の中、吹きすさぶ寒風に耐えながら半裸で並ぶおじさんたち。
ものぐさには代償が求められるということだ。
ちなみに俺は冬期以外で受診したことがない。
・健康診断は、まず、身長・体重測定から始まる。
ご存知のとおり、これが女子中高生たちにとってのヤマ場だ。
俺が女子中高生だった頃はもうだいぶ昔のことではあるが、今でもヤマ場である。
というのも君たちは【175の壁】というのを聞いたことがあるだろうか。
俺が名付けたのだから聞いたことがあるという者は大嘘つきだ。
過去にも記事にしたことがあるのだが、俺の身長は175センチを優に超えているはずなのだが、劣悪な設備で身長を計測すると174センチ台になる問題のことだ。
この量子力学上の未解決問題については過去(いまや8年前だ)にも記事にしたことがある。俺は同じ問題について少なくとも8年以上はグダグダと話していることになる。
サムネイル画像からは想像もできない内容の日記だ。
そしてこの時は、寝てから検査会場に来るまでの重力によって身長が縮むことを問題視しているから、量子力学ではなくて万有引力の問題だったかもしれない。
身長・体重測定の会場に到着して、まずは測定員の目をじっと睨みつける。これは基本である。わずかではあるが1~2ミリ程度の身長上昇効果がある。
「早く乗ってください」という計測員の指示に従って体重をはかり、次に身長をはかる。
結果はその場ですぐに見せてくれる。自分の身長がいかほどか今すぐに知りたいという、30代にもなって身長の高低に一喜一憂する不思議なやつが世の中には意外と多いのだろう。
とりあえず良かった。安堵してこれで家に帰ろうとしたところ「まだこれからです」と言われて健診コースに戻った。
・ところで、体重が昨年より結構増加している。ウエストもだ。
理由は明白で、最近、あまりランニングできていない。
20代の頃は「基本毎日走る。雨が降っていても多少なら走る」という精神で1年のうち360日くらい走っていたのが懐かしい(飲み会のあとでも走っていた)。
それが今では週に1~2回走ればいい方だ。
走れていない理由も明らかで、子どもをお風呂に入れたり、寝かしつけしたりしているからだ。
とにかく子が起きている間は自分の時間が確保できず、ランニングに行くのは早くても午後8時頃となる。
更に、それまでに風呂だの寝かしつけだのやっていると、自分の体もリラックスして(「おやすみモード」に入って)しまって、とてもそこから何キロも走れる気分じゃない。
このように、子どもの寝かしつけとランニングを両立させる方法は無いものか。
そう悩み続けていた俺だったが、つい最近、「範馬刃牙(はんまばき)」という医学の専門書を読んでいる中で、その答えを見つけた。
それがこのシーンだ。
10割の読者はこれがいったい何なのか分からないだろうから解説する。
これは、「範馬刃牙」に登場するとても強いキャラクターである「ビスケット・オリバ」という人物が、自分の恋人をキングサイズのベッドに寝かせたまま、それを持ち上げて歩いているシーンだ。
オリバは自分の大好きな恋人に、自分が戦っている場面を見せたかったのだが、恋人はある理由でベッドの上から動けないものだから、ベッドごと運んでいるというわけだな。
この方法によれば、理論的には「子どもを寝かしつけしながらランニングする」という問題が解決できる。
しかし問題も1つある。ランニングする前にまず上半身をとてつもなく鍛える必要があるということだ。その時間がない。
・続いて採血に移る。
男のくせに情けないと思われそうだが、俺はこの採血が苦手で、自分の血が管を伝って流れ出していく様子が気持ち悪くて仕方ない。
なので採血の間はぐっと目を瞑っているのだ。
採血の前に問診があって、「これまでの採血で気分が悪くなったことはないか」と聞かれるのだが、あまり毎回気持ちの良いものではない。
が、こういう医療的な問いに面倒くさい答えをすると、面倒くさいことになるから毎回「気分悪くないです」という嘘をついている。俺は嘘をついているのだ!!
・心電図検査の時に慌ただしく働いている看護師さんの腕が俺の顔にぶち当たってメガネがぽとりと床に落ちた。
・胃の検査である。
うちの会社の健診では、胃の検査はバリウムを飲んで行う。
これは甚だしい人権侵害である。
バリウム検査をしたことがない幸運な読者に、こ
れがどのような人権侵害であるかを説明しよう。
まず罪深き俺たちは、検査場につくなり、「よくわからない粒」と、「よくわからない真っ白の液体」を手渡される。
まずこれを飲めというのが乱暴な話である。
「粒」の方は、飲み込むとたちまち泡が発生して、胃の中を空気で広げる作用がある。
ただこれがものすごくゲップを誘引するというか、とにかく込み上げてくるものがある。
だがそれに負けてゲップをすると全てが台無しになり、最初からやり直しなのだという。場合によっては罵られすらもするらしい。なんと言ってもこれが辛い。まずこれが日本国憲法の11条に定める基本的人権の侵害に該当する。
次に、粒をようやく飲み込んで、込み上げてくるものを全力で我慢しているところに、本題の「バリウム」を飲むように指示される。
これは牛乳のような真っ白をしている液体であるが、とにかくクソまずい。人によっては「ヨーグルト味でうまい」などという感想を持つ者もいるというが、完全に頭のおかしい奴である。
こんな得体のしれない、味も何もない、もったりとして飲みづらい、ケミカル100%の(果汁100%の対義語である)液体を、しかもかなりの量飲まされる。そのへんの居酒屋で注文して出てくる生ビールくらいの大きさのコップで飲まされる。
しかもこれは、ゆったりと、時間をかけてちょっとずる飲むものではない。待っている人がいるから、込み上げてくるものを我慢しながら1分くらいで飲まされるのだ。
これだけでも日本国憲法36条に定める拷問及び残虐な刑罰の禁止に完全に違反しているではないか!!
俺達を待ち受ける酷い仕打ちは、これで終わりではない。バリウムを全て飲み、苦しがっている俺達は、ある小部屋に通され、機械の前に立たされる。
そこでただ突っ立って写真を撮られるだけではないのだ。
その小型の機械にしがみつき、ぐるんぐるんと振り回される!!
これは文字通り全方位、360度に回転する拷問具だ。
ドローンの車が空を飛び、量子もつれを利用したコンピューターが開発されるこの時代に、胃の写真をとるためにこんなぐるんぐるんをやる必要なんか当然ないから、不当な刑罰である。
正直、バリウムを飲まずにこれに乗ったら結構楽しいだろう思う。
俺が胃の検査の業者だったら、昼休みとか暇なときに自分が乗って遊ぶと思う。
だが、今の俺はバリウムを飲み、込み上げてくるものを我慢しながら、絶体絶命の状況でこいつにしがみついている!
小一時間ほどこの拷問具で我慢して小部屋から出てくると、助手の人から薬を渡され、できるだけ早くこの薬を飲め、そして、◯日以内に飲んだバリウムが体外に排出されない場合はすぐに医師の診断を受けるように、とのことだ。人に無理やり飲ませておいて今度はなんとしてもそれを出せってそれはないだろうと思う。
俺は最大限の抗議の意味を込めて「わかりました。ありがとうございます。」と言って薬を受け取った。
こんな話を同僚にしたら、
【お前まだ会社の健診でバリウム検査してるの? 俺なんか胃の検査は自分で病院を予約して、胃カメラにしてもらってるよ。最近の胃カメラは、鼻の穴からカメラを挿入するから快適だぞ】とか言うから、手近にあったフリクションボールペンを同僚の鼻の穴に突き刺してやった。
鼻からカメラだあ??? 世の中には色々な拷問が用意されていることだ! そんならまだあのクソまずい液体を我慢して飲んでいたほうがマシかもしれない、いやでも実際楽なのかな・・・。
俺は思う。国は伊藤園とか小岩井フーズとかに多額の税金を投入して、あのバリウムをめっちゃ美味しいジュースみたいにするよう研究開発を促してくれないかな。
1年に1回とはいえ、あれを飲む日が近づくと思うと気分が憂鬱になるのだ。来年は鼻からカメラいれようかな。