チャリの鍵なくした

本日は題名のとおり、チャリンコの鍵を紛失したというテーマに沿ってお話をさせていただこうかと思います。 

目次は以下のとおりです。

 

  


------

チャリの鍵なくした。

この「チャリの鍵なくした」というのは、このブログの著者のように一般人よりもやや物忘れが多いタイプの人間の業界(これを「忘れ物クラブ」といいます)で、ほぼ日常的にかわされる気軽な挨拶のうちの一つです。

 

たとえば朝起きて、ランドセルを背負って学校へ向かう途中、同級生とばったり出会うとしますね。
「おはよう」「おはよ。チャリの鍵なくした

しばしばこのように「髪切った?」くらいの感覚で「チャリの鍵なくした」は用いられます。太陽が東から登り、潮が満ちては引いていく。そのくらい自然なこととして、彼らはチャリの鍵を無くすのです。

 

もっとも、忘れ物クラブというだけあって、無くすのはチャリの鍵だけに限られません。
朝起きてから延々と、靴下やら定期券やら「アレがない、コレがない」と繰り返すうちにもう家を出る時刻となります。読者の中には、そうしたドタバタに心当たりのある人もいるのではないでしょうか。そう、あなたもまた忘れ物クラブの会員なのです。ようこそ忘却の世界へ。

 

必要なものをあらかじめ準備しておかなかった自分が悪いにも関わらず、忘れ物クラブというのはだらしない人間の集まりなので、基本的に反省をしません。反省をしないどころか、これらを全部棚にあげたうえで「俺のチャリの鍵ないんだけど母ちゃんどこやった?!」などと全く無関係の親を責めたてる始末です。

 

親というのは偉いものですから、家の家事全般を司っています。毎日の夕飯を作り、しばしば洗濯をし、このようにデキの悪い子どもたちを学校へ送り出すものです。
従って、チャリの鍵がどこへ消えたかについても当然に知っているだろう、というのが彼らなりの一級の理屈なんだそうです。

もっとも、この一級の理屈が単なる悪質な責任転嫁に過ぎないことを、彼らはずっと大人になってから知ることとなります。ヘタをすると、働き始めて一人暮らしをしてからようやく「チャリの鍵がなくなったのって、他の誰でもない俺のせいだったんだ」などと気がつくことになることでしょう。

 

それにもかかわらず、上記したように忘れ物クラブの会員はズボラですから、たとえ親から「なんで毎日決まったところに置かないの??」などと全く正当な指摘をされても耳を貸すことは決してありません。実に愚かなものです。

そしてこのろくでなしどもは、20歳も過ぎて一人暮らしをしてからようやく「なんで俺って毎日決まったところに置かないんだろう?」などと自分の間抜けさ加減を呪うことで、そのツケを払うことになるのです。

 

皆さん、ティーンエイジャーの今はそう思わないかもしれませんが、親の言うことはそれなりに正しいから、なるべくそのとおりにしておい方がいいですよ。

そんな時に「あーはいはい。あーわかったわかった」などというとても愚かな態度をとりつづけた人間の末路は、おおむね以下のように哀れなものとなることでしょう。


--------


チャリの鍵なくした。

 

今度という今度はマジのマジで無くなった。

 

家にある全て引き出しを開け、あらゆる小物入れを覗きこみ、いかなる服のポケットを裏っ返しにして探したものの一切出てこないんだわこれが。

こうなるともう神隠しか? でもどうして神はチャリの鍵にそんなことを? この俺にいったい何の試練を与えようとしてるんだ?

 

とりあえず、チャリは駐輪場に止めてある。
ということは、その鍵はしっかりと持ち帰ってきているわけで、つまりこの部屋の中にあるはず。

が、全く見つからん! なんで!!

昨晩から使った記憶もない。夜のうちにどこかへ消えたんだ。

ルパン三世のような怪盗が夜中に忍び込み、チャリの鍵だけを持ち去ったとしか考えられない。でもどうしてルパン三世はそんなことを? 不二子ちゃんにやるほど良いチャリじゃねーぞ?

 

ところでこういう時に決まって言われるのが「最後にいつ使って、どこへ置いたのか思い出せないの?」などという意味不明の問いだ。

それがまさに1ミリも思い出せないからこそ今こうして家中を逆さに振って探してんだ!

 

こうなるともうお手上げだから、もはや「1チャリ」たりとも漕ぐこと叶わないそのチャリ(だった鉄の置物)を、無様にもチャリ屋までよいしょよいしょと担いでいき、チャリ屋の工具などを使ってこじ開けてもらうことになる。


もちろん、その手数料を支払い、新しい鍵も買って帰る。これが物忘れの代償だ。
そして、俺たちはこうしたことを生まれてこのかた10回くらいは繰り返している。

そろそろこの忘れ物クラブの病気の深刻さが伝わってきたことだろう。

 

が、今回はチャリ屋でこじ開けてもらうわけにいかないんだ!
その理由は、俺が今のマンションへ引っ越してきた後で、以下のような出来事があったからだ。

 

-----


俺が今の賃貸マンションに引っ越してきたのは1年半ほど前になるが、ここの駐輪スペースは入居者ごとの区分けが特に無く、広い駐輪スペースのどこへ止めたって良いというシステムとなっている。


ただし、屋根があるスペースはそのうちの1画だけなので、当然みんながそこへ止める。
俺も基本的には屋根のあるスペースへ駐輪していた。

 

が、ある時、駐輪場に来てみると、俺のチャリだけが屋根の無いスペースへ勝手に移動されている! きちんと「住人シール」も貼っているというのに!

 

マナーの悪い他の入居者が、自分のチャリを置くために移動させたんだろか。
そう思って、俺は自分のチャリをまた屋根のあるスペースへ移動しておくと・・・・次の日、またまたチャリが移動されている!

しかも屋根のあるスペースにはまだ空きがあるというのに! 

 

「戦争だ。」

直感的に俺はそう思ったのでした。
新たに引っ越してきた者を歓迎しない住人による嫌がらせだとしか思えない。

 

嫌がらせでなくとも、こうして勝手に移動されるということは、いつかは勝手に持ち去られてしまう可能性だってある。
俺は、こうした悪質なマナー違反には決して屈しないしないと決めているから、早速以下のとおり自転車を勝手に移動されないための対抗策を検討することとした。

 


1.ゴルフクラブを持って駐輪場の影に見を潜ませる方法

 

方法としては単純で、おそらく犯行時刻と思われる深夜を通じて駐輪場の影にずっと待ち伏せる。

そうとは知らず、のこのこチャリを動かしにやってきた犯人を見つけ次第「何してんだーー!!」と飛び出していって、気が済むまで7番アイアンでひっぱたいてやるというのがこの方法だ。


これは、俺の父親が「これはまだ父ちゃんが大学生だった頃の話なんだが、バイクを連続で盗まれた時があって、さすがに頭にきて野球バットを持って近くの茂みに2晩ほど身を潜めて見張っていたんだ」という話をよく子どもたち(俺と妹)に言って聞かせることがあって、その時は兄妹そろって「いや警察呼べよ」などと思ったものだが、ガキの考えというのは浅はかなもので、「チャリが勝手に移動される」という警察が介入出来ない問題(グレーゾーン犯罪)に対処するには、こうした直接行動しかないのだ。

が、季節は11月と寒いし、たかがチャリのことでゴルフクラブを振り回せば、その後の裁判で被告人として出廷することになるのはどっちか分からない。よって却下。(父のその作戦がもし成功していたら彼も今ごろ前科者だっただろうと思う。)

 


2.監視カメラを設置して犯行現場を録画する方法

これは、監視カメラ1台の価格がチャリを上回っていたので却下(盗ませたほうが安上がりってことだ)。あと、たとえ犯人の顔がわかったとしても、上記したとおり何かの犯罪でもないんだから何もできん。


3.チャリに大量のうるしを塗っておき、犯人が動かす時に嫌な思いをさせる方法
これは結構良い線まで行った。
でもうるしってその辺のスーパーオオゼキとかで売られてないのな!

あと自分が乗る時もテンションが下がるんで泣く泣く却下した。


4.頑丈なワイヤーロックで駐輪場の柱にがんじがらめにする方法

で、結局これやっちゃったんですよね。


駐輪場の屋根があるスペースには、その屋根を支えるための柱が何本か生えているから、そこへワイヤーロックなどを使うことによってチャリを固定させることができるんだ。そうすれば、どうしたってそこからチャリを移動させられない。

これに気がついた時、わたしはチャリを漕ぎながら「やった」と一人呟いたものです。

 

そしてそのチャリで俺はすぐにドンキへ飛び込み(どんなにテンションが高くても店内に入るときはチャリから降りた方が安全だ)、その店で最もぶっとくて頑丈そうなワイヤーを購入したうえ、その晩のうちにチャリを柱にがんじがらめにしてやった!

 

どうだ! 何の権利か知らんが、俺のチャリを勝手に動かす悪質なマナー違反者も、さすがにこれでは手が出せないだろう! わっはっは! これにて一件落着!(※なお、個人のチャリを共用マンションの柱にがんじがらめにすることの権利について、ここでは一切検討していない)。

 

そして実際にこのワイヤーロック作戦の効果はバツグンで、それからというもの俺のチャリは二度と移動されることなく(だって俺のチャリの鍵がないとワイヤーロックが外せないんだからな!!)、安心のマンション生活を送ることができたのじゃった。

めでたしめでたし。


----


チャリの鍵なくした。

 

いやー、さすがにこれにはまいりましたね。
だってアレですもん、柱にがんじがらめだもの。


もう何があってもチャリが移動されないようにと、工夫と憎悪を込めて柱にぐるぐる巻きにしとったもんじゃから、もうぴくりとも動かせんのじゃ。

 

そうなると「チャリ屋まで持っていって鍵をぶっ壊してもらう」というのもできん。

なぜならチャリを持っていこうとすれば、一緒に駐輪スペースの屋根ごと背負っていくという哀れなヤドカリのようなことをするしかないからだ。


もはやこうなると、このチャリがある限り俺は責任をもってこのマンションが老朽化し解体されるその日までここに住み続けなければいけないことになる。

あるいは前向きに考えると、このマンションだって何もない駐輪場の柱に突然かっこいい赤色のチャリが付属されることになるので、更に資産価値が上がるかもしれないから「しーらないw」つって引っ越しても別にいいかもしんない(こうしたことを法的には不法投棄というんだそうだ)。

 
紛失した鍵について、上記したように家の中は探し尽くした。
洗濯機の中はもちろん、テーブルの下や、トイレの水タンクを覗き込むようなことも数万回はやった(突然俺の頭がおかしくなってそんなところへ投げ込んだかもしれない)。
だから今後、チャリの鍵が家のどこかから発見されるといったようなことは無いだろう。

マジでどうしよう?

 

以上のようなことを友人に相談してみると「なんだ、またそんな事で困ってるのか」と。

俺のことをさぞだらしない人間だと思ってお説教でもされるのかと思ったら、「そんなのはワイヤーカッターでいくらでも切断できる。ガソリンスタンドに持っていくとバイク用の立派なカッターを貸してくれるから、それだと間違いない」。間違いなくこの人相当これまでにチャリの鍵無くしてきてるぞ。

このように、忘れ物クラブの会員は、そもそも物を無くさないようにしようという努力はちっともしないくせに、忘れ物をした場合の対処法についてはやたら詳しい場合がある。


もっとも、チャリをガソリンスタンドに持ち込むというのは、今回のチャリが置かれている状況(柱にがんじがらめ)からいって不可。従って、わざわざホームセンターなどに足を運び、2,000円くらい出してワイヤーカッターを買わないといけないということになる。うわ〜めんどくせ~。

面倒臭いし、値段も高いうえ、ワイヤーカッターなんか買ったってこの先チャリを救出する以外の使いみちが全く思いつかん。生まれてこのかた、30年間で一度も「うわ~❢ いまこの時にワイヤーカッターがあればないいのに~❢」みたいなことってないでしょ。

みんなにはありますか? 好きな人とデートして、ちょっと会話が途切れちゃって気まずい雰囲気だな~、何か話題があればな~~~あ~~~こういう時にワイヤーカッターあればな~~みたいなのないでしょ?

 

「金太郎アメ切る時くらいには使えるかな?  この20年間くらいで金太郎アメなんざ1個も食ったことないけど」などと先の友人に改めて相談していると、そんなもんダイソーで売られてるので十分だから安心して買ってこいとのこと。

100均のでもいいの?! ありがとう、なぜか不思議と自転車のワイヤー切ることに詳しい人!

 

というわけでダイソーの200円カッター(商品名はケーブルカッター)を買ってきた。

f:id:amemiya_a:20190301224939j:image


そんで切断した。

f:id:amemiya_a:20190301231428j:image

 

ちなみに、これから同じくワイヤーを切ろうって思っている忘れ物クラブの同士に伝えておくと、まず、ワイヤーを切る前に外側のゴムを普通のハサミとかで切っておいたほうがいい(じゃないとワイヤーカッターで挟めない)。

それから一度でパチンと綺麗に切れるわけじゃない。根気が必要だ。ケーブルの細い繊維を少しずつ切っていくようにして地道にグイグイ切っては、ネジネジと捻っていくしかない。これが割と面倒くさかった・・・(とはいえダイソーのカッターでも大丈夫だった)。 

 


はー、人のチャリを柱に縛り付けるなんて本当に酷いことをするヤツもいたもんだ。

しかし裏を返せば、このように100均のワイヤーカッターごときでいとも簡単にワイヤーを切断できるということは、世の中にあるワイヤーロックなんて気休めのようなもんだな。歩き疲れた酔っぱらいに盗まれるのを防げるくらいのシロモノなんだ。

 

このように、意図せずワイヤーロックの弱さに気がついた俺は急に怖くなってきたので、次は鋼鉄製の絶対に切れない頑丈な錠前でしっかりと賃貸マンションの柱に縛り付けておこうと思ったのであった。

 

-----


さて、これでチャリの鍵の件は解決したんだが、忘れ物クラブの俺にはこれとは別の問題が大きく頭をもたげている。

 

それは、チャリの鍵のみならず、家の鍵も今年に入ってから既に2本ほど無くしており、あらかじめ作っておいたスペアキーがもはや最後の1つとなってしまったことだ。

今回の一件で家の鍵の保管についても怖くなった俺は、すぐにその鍵専用の保管箱を・・・作ることなく、スペアキーを作りに救出したばかりのチャリを漕いでいったのであった。

 

というか、以前にどこかで落とした家の鍵を拾ったヤツが、勝手にうちに上がり込んでチャリの鍵だけ持っていったというのはないだろうか。でもどうしてそいつはそんなことを?

 

 

f:id:amemiya_a:20190301233530p:plain