メリークリスマスイブ。
今日はテレワークでずっと家にいたけれど、夜はケーキでも食べようと思って駅まで行ったら、改札から出てくる若い女の子みんなを、右から左から片っ端から「今日遊べませんか」とナンパしている男がいた。計画性なさすぎだろ。
それか、クリスマス当日に遊ぶ予定だった女の子にドタキャンでもされたのかな。だとしたらちょっと可哀想になる。
駅の広場くらいまで女の子についていって、それでも相手もされないと、諦めて落ち込んでいた。
そうしてうなだれる男のすぐそばには、「道行くみなさん、あなたたちは、キリストが再誕したのはなぜだか、わかりますか?」と演説している男が立っている。
クリスマスイブなのに地獄だよね。
このキリスト男は年がら年中、いつも駅前にいる。
いつもいつも、キリストの存在を僕たちに気付かせてくれる。
気付かせてくれるのだが、なぜだろう、ずっと「いないもの」として扱われている、たぶん40代くらいの男性だ。
キリストがいるんだったら、今夜くらい、あの不幸なナンパ男を救ってやってほしいと思いながら小走りにその場を立ち去った。その理由は次のとおり。
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駅前に小さなケーキ屋があって、前から良さ気だな~と思っていたから、前もってクリスマスに食べるケーキを予約していたんだよね。ホールケーキ。
みんな、ホールで食うケーキはいいぞ。
俺は提唱したい、この世界に住む人が最初に抱いた夢、8割くらい「ケーキをホールで食べたい」説。
大人になると容易にこうしてケーキが食べられるから、大人になってよかったと心から思う。
大人っていいぞ。お金もらえるし。中高生の君たちに自慢したいくらいだ。
で、この予約ケーキの引取りが19時00分だったから、そのとおり19時に家を出て駅に向かった。
早速遅れてんじゃねーよって君は思うだろう。
でも大丈夫。
君たちは、いままでにクリーニングの引取りをしたことがあるか。
19時に引き取りっつっても、それは19時以降、閉店までを意味する。だから割と余裕なのだよ。
そう思ってとぼとぼ歩いていたら、電話が鳴った。
相手「ケーキ予約されてますよね?」
ぼく「はいそうです、19時以降引取りですよね。」
相手「うち閉店19時なんです・・・」
ぼく「転がるくらいダッシュします」
ケーキ屋が近づくと、路肩に(あれって店主の女性かな~・・・)って人が、まさに文字通り首を長くしながら、そちらに歩いている俺のことを凝視しているのがわかった。
人生ではじめてケーキ屋に行きたくないと思った。
時刻を見ると19時15分くらいだったけれど、とりあえず売ってくれるようで安心した。
店内に入る。
そしたらこの日のために増員していたバイトさん8人が一斉に俺を見た!!!
そんなにカウンターにスタッフ必要か??? って思うくらいカウンターの向こうで8人が俺を見る!!
しかもたぶん19時あがりで彼氏とデート予定だったろう若い女性のバイトさんだよ!
本当に申し訳ない気持ちでケーキを受け取り、お金を支払う。ほんとごめんよ・・・。
その間も、手持ち無沙汰のバイトさん8名は俺を見る。ほんとうに、ほんとうにおまたせしてごめんなさい。
レジをしてくれた人に
「お持ち帰りのお時間はどれくらいですか?」と聞かれ、
「15分くらいです」とこたえる僕。いま19時15分。
「「「「てめー19時になってから家出てんじゃねーよ」」」」」
帰りに駅前通るとまだナンパしてるしあいつ・・・。