2月から続いていた通勤片道1時間40分の仕事が完結し、元の平穏な生活に戻った。
深夜1時に寝て、8時頃にのそのそ起きてきてテレワークを始める。
これが令和にあるべき人の姿である。
往復3時間超の通勤について、行きは良いとしても、帰りはもうへとへとだろうから、せめて帰りの電車だけはグリーン車を利用することにした。グリーン車は、乗車券とは別に1,000円近くの代金を支払って静かで座れる環境を手に入れるもので、その通り、静寂と平和を求める常識人だけが乗っている、というわけではない。
例えば下記のような者がしばしばグリーン車に乗っている。
●グリーン券を持っていないのに乗車している人(頭上のランプでわかる)
これはグリーン券なんてものが世の中にあるのか、という人がいてもおかしくないので、まだ分かる。
●グリーン車に乗ってすぐに一杯やろうとしてビールを開けるものの、ピーナッツの袋の開け方をミスって盛大に辺りにぶちまける人。
すごくよくわかる。何らの疑問をさしはさむ余地はない。
●券を買っていない横のシートに自分の荷物を置く人。
「混んでないからいいだろ」という理屈だろうが、割と人が乗り込んできてもそのままだったりする。または、シートの上ではなく足元に置いたり。
そういうことはできれば止めるか、隣の席のグリーン券も買ったらいい、金はあるんだろうから。
●座るやいなや、フルスロットルで席をリクライニングさせる奴。
俺は思うんだが、乗客の手元に「投票ボタン」を置いて、「いますぐ電車から降ろしたい座席の奴」を投票できるようにしてほしい。
そんで一定以上の投票が集まったら、その者の頭上の天井が開いて席ごと「ばびゅん!!!!」だ。戦闘機などの緊急脱出システムのようなイメージ。
それくらいこの「フルスロットル・リクライニング奴」は不快であり、かつ、非常に多い。こんなのにぷりぷり不満を言っている俺のほうが非常識なのかと思えるくらいだ。
ああいうリクライニングは、まさに倒れているか倒れていないか分からないくらいの速度でゆっくり倒し、まるで「アハ体験」のように「言われてみたら倒れてた」くらいの感じにやるのがマナーと思い込んでいたが、それは全く違っていたのだ。
むしろ、下げた座席で俺の前頭部に一撃を食らわせに来ている感すらもある。
それが横須賀線でのマナーなのかもしれない。
文句ばっかり言っても無力だから、グリーン車に乗るうえで現れるこのフルスロットル・リクライニング奴への対策することにした。
A案.むしろ全力でリクライニングを押し返す
B案.むしろ頭をぶつけて痛い痛いといって刑事告訴する
これらの2案は、すでに帰宅途中でへとへとだということもあり採用には至らなかった。
C案.フルスロットル・リクライニング奴が現れない場所に座る。
これは真面目に検討した。
まず論理的に、リクライニングされるのが嫌であれば一番前に座れば良い。このブログはたったこれだけの記述で終わるものだ。
が、あくまでこの2か月間の感覚に過ぎないが、何となく前方は外国人が大きな荷物を携えて大騒ぎしている率が高いような気がした。後ろよりも前に乗った方がメンツが保たれるという習慣でもあるんだろうか? 何となくやだ。
そのほか様々な位置にある席を試したが、あまり規則性は無いようだった。というかほかの座席が十分に空いていても俺の前の席に座るやいなやフルスロットルする。俺が「フルスロットルされ顔」をしているせいだろうか?
若干「左側」の座席の方が変な人がいる確率が下がったように思えたが、なんか、自分の三半規管的に、左側の席にいると酔うことがわかった。変な人たちも同様の理由で左側を避けるのかもしれない。知らんけど。
D案.常識的な人の後ろに座る。
これが最も合理的かつ確実な方法だった。
俺は上記の対策を行いながら、「今日は来るかなフルスロットル・リクライニング奴・・・」などと無様に怯えていたのだ。
そうではなく、初めから「フルスロットルしてない常識的な人」が乗っているのを確かめて、その人の後ろに座ればいいのだ!!!
これに気が付いたその時、俺は倒れてくるリクライニングシートを両手で押し戻しながら「やった」とつぶやいたものだ。
確かに、前に人が座っている席よりは、周りに誰もいない席の方が快適だ。だが将来的にどんな不快な思いをするかは分からない。
「良いかもしれないし、すごく悪いかもしれない」というリスク(不確実な将来への危険)を負うより、あらかじめ嫌な思いをする限度を決めておく。
これを「損失を限定する」といい、株式市場のオプション取引に使われている理論だと思うたぶん。
そんなわけで、グリーン車に乗り込むと、まず全席を見渡して、どんな席が空いているかとともに、その前の席にはどんな人がすでに座っているかを分析する。
A.すでにフルスロットル・リクライニングをしている奴の後ろの席
論外であって、すぐにでも投票ボタンを押して天井から追い出したいくらいだ。
B.周りに誰もいない席
今は快適かもしれないが、いずれ危険な状態に変わりうる。目先の心地よさに釣られてこれを選んでしまうのが問題だったのだ。
C.すでに常識的な人が座っている後ろの席
これが正解だったというわけだ。
このフルスロットル・リクライニング完全回避法に気が付いてからというもの、俺はただひたすら常識人の後ろに座り続けたのであった。
ただ、実行してみてから分かったが、一見すると完全無欠のように思えるこの方法にもしかし重大な問題が潜んでいたのだ。
俺が帰宅時に乗るグリーン車はめっちゃ空いているということだ。
これにどんな問題があるのだろうか。
例えば君が一人でグリーン車に乗っているとき、ある駅で1人のサラリーマンが乗ってくる。
この時間帯、君の席以外には無数の座席が空いているにもかかわらずピッタリと君の真後ろに座ってくる!!! これが恐怖でなくて一体何なのだろう。
これが女性だったら叫び声をあげられても何も不思議じゃない!
この問題に行き着いた俺はもはやリクライニング奴のことをすっかり諦め、自分も席を倒しながら、ぼーっと天井を眺めることにした。
そうか、お前たちもこうだったのか。