百人一首の話

今となっては昔のことだが、和泉式部(いずみしきぶ)って歌のうまい人がいた。

で、その娘で小式部(こしきぶ)って子がいたんだが、これも歌が上手で、いわゆる天才キッズ的な扱いを受けていたそうな。

でも、やっぱりそんな状況を面白く思わない大人もいるんだな。
(あいつの歌って、実は全部、母ちゃんが作ったものじゃねえの??)って。

例えば藤原定頼ってやつがそうだ。
ある時、ミュージックフェスに小式部がやってきた時、定頼はこんな意地悪を言った。

「おめーの母ちゃん、いま遠く(生野という土地)にいるんだってなあ。こんなフェスなんか来て大丈夫か? 母ちゃんに、【作詞してくれよ~ママ~(´;ω;`)】って文(フミ)は送ったか?笑」

超いじわるな大人な。

それに対して、小式部は、その場でラップ風にこんな返しをした。

 

 あそこに見える、大江山
 行く野の道は、生野の道
 アタシにとっちゃ 遠い道
 母ちゃん向こうに いるからよ
 文(フミ)もまだ見ちゃいねえのさ・・・

 

普通、こんなバトルをしかけられたら、相手もそれなりの応酬をするのが礼儀ってもんだが、当の藤原定頼は才能ないガキだと思ってた小式部に即興でこんな歌詠まれたもんだから、びっくりして尻尾巻いて逃げた。これはほんとに逃げた。


他方で名を上げたのが小式部で、この歌は即興なのにも関わらず、一発で小倉百人一首入りを果たした。


かっこいいよなー小式部。
俺が百人一首で一番好きな歌でもある。
成功したものに対して、品性下劣に絡んでくる者は必ずいる。
それを「サラっと」才能パワーで撃退したエピソードとして大好き。

俺たちも、他人の才能を妬んだり、または自分の才能をひけらかしたりせず、彼女のようにスマートに生きていこう。


そんでなぜ急に百人一首エピソードなんか書いたか?
令和の子どもたちにとって一番の楽しみは、SwitchでYou Tubeを見ることだって報道を見たから。
その僅かな昔に生まれた俺たちは、変わった形の木の枝を振り回すか、カルタで遊んでいたんだよな。
そのカルタというのが百人一首というもので、その名のとおり100種類ある。お前たちがポケモンを数百匹覚えるのと同じように、この100首を暗記して無双したものだ。なんか悲しくなってきた。

 

なお小式部の歌った歌詞は、正確には次のとおり。

 

大江山いく野の道の遠ければ まだふみもみず天の橋立