選挙に行くことを強制しても、ろくなことにならない。

 こんにちは。

「ミイラ取りがミイラになる」ってよく言うけど、ミイラ取りに行ったことそんな無いよな。俺も25歳を境にしてめっきりミイラ取りに行ってないし。
もちろん、ミイラになったミイラ取りの知り合いもいない。

どなたか、ミイラになっちゃった知り合いがいましたら、Twitterでお知らせください。

 

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「選挙に行くことを義務にして、もし投票所に行かなかったら罰金とったらどうか」みたいな意見が、いよいよ政治家の人からも出たようだ。

そもそもそんなの人権侵害じゃないかとか、身体が不自由で選挙に行きたくても行けない人はどうすんだ、とか、そういう意見はとりあえずさておいて、俺は普段選挙に行かない人に投票を強制しても、あんまりろくなことにならないと思うんだよね。

 

なぜなら、そういう「罰金がイヤだから、しぶしぶ選挙行く」という人が増えたとしても、そういう人って「せっかくだし、各政治家の意見を比較したうえ、熟慮を重ねて自分の投票先を決めよ!」だなんてこと、多分しないんじゃないかと思う。むしろ、どこかのテレビで見たとか、顔が面白いとか、考えうる限りのどうでも良さそうな理由で投票先を決めるんじゃないかな。

で、罰金まで課して、そういう(ある意味では無価値な)投票をたくさん増やしたとして、それって何の意味があるんだろうと思う。

 

「いや、強制的にでも政治の活動に関わることで、自ずと興味や関心が湧くものである!」という意見もあるかもしれないけれど、そういう人はとてもお勉強や努力が好きなお利口さん。

お利口さん過ぎて、世の中にはそういう前向きなエネルギーを全く持ち合わせていない人たちのことがあんまり想像できていないように思える。


それなりにやる気があって生きている僕らだって分かっているとおり、誰かに無理やりやらされること(しかも日曜日に)って、驚くほどやる気わかないんだよね。

実際にやるとしても、なるべく労力を使わず、「やっつけ」で済ますだろう。そんな「やっつけ投票」を、罰金まで払わせながら増やしていく必要性が、俺にはあんまり見いだせない。

 

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罰金が嫌だからと、無理やり投票所に行かされた人が投票する先は、合理的に考えると次のとおりと考えられる。

 

・「選挙に行かなきゃ罰金」みたいな制度を変えてくれそうな政治家

NHKをぶっ壊すとか、よくわからないけど面白いこと言ってる人

・なんか名前が面白い人、テレビで見たことある人

・鉛筆転がし

 

「いや、たとえそういう人たちに投票したとしても、行かないよりはマシ」と言うならば、それはそれでアリだと思う。

でも、俺はそう思わない。

こういう人は(本人にとっても時間のムダだから)選挙に行かないほうがいい。

 

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そもそも、「投票率をあげたら日本の政治が良くなる」という意見には、「みんなが政治に興味持って、よくよく考えて投票する」という、暗黙の前提があるように思える。
でも、俺は必ずしもそうじゃないと思うというのは上記のとおり。


「罰金が嫌だから」という理由で、政治家の政策を調べたり、少しでもスマホで検索したり、そういうことをする人って、そもそも強制されなくてもこれまで選挙に行ってる人だと思うんだよね。


「投票に行く人が増えたら、組織票の威力が減って、平等な選挙になる」という人も見かける。
組織票ってのは、具体的に言うと、創価学会の人たちが必ず公明党に投票するようなもの。
彼らの投票率は100%だから、そのほかの(一般の)人が投票しなければ投票しないだけ、(必ず学会員が投票する)公明党が有利になってしまう。

それはイヤだから、創価学会以外の人もみんな投票しようよ! という理屈。

 

でも、そうして無理やり投票に行かされた人が、どうして公明党に投票しないって分かるんだろう。
むしろ、そういう「政治に興味ないし、どこに投票したって一緒」と思っている人ほど、かんたんに周りの人の意見に乗っかって「お前が言ってるんだったら、そこに入れるわ」ってなるんじゃないかな。
そして、そういう人に対して「ここがいいわよ」などというアドバイスをしてまわるのを日頃の仕事にしているのが、創価学会などの宗教団体だということをお忘れなく。

 

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以上、人を無理やり選挙に行かせてもロクなことにならないという意見を言ったけれど、それとは逆に、やっぱり(ちゃんと考えて)選挙に行く人が増えたら政治が良くなるというのも事実なんだよね。

理由は以下のとおり。

 

選挙に行く人が、たとえば就職していて、大企業で働いているお金持ちだけだとする。
他方で、ほかの(例えばアルバイトで食いつないでいるような)人がみんな「誰に投票したって同じだろ」と言って、投票しなかったとする。

 

この場合、政治家は、そういうバイトの人たちを哀れに思って、彼らのための政治をする・・・・わけがないんだよね。
彼ら政治家を評価するのは、結局「選挙」だけだから、その選挙で投票するだろう人にウケるためのことをする。というか、それ以外のことをしない。これが合理的な行動だ。

 

そう考えると、この場合で言えば、きちんと選挙に行くお金持ち向けの政策(富裕層向けの政策、つまり、固定資産税や相続税の減税)を行いつつ、ど~せ選挙に行かない人たちにその分の苦労を押し付ける。例えば、消費増税など。

 

で、そうして苦労を押し付けられた人たちは、たとえ怒ったとしても、選挙に行いかないんだから、何したって構わない。
たとえ老人の医療費を若者がみんなで負担するような制度を提案しても、選挙に行くのは老人だけで、若者はせいぜいTwitterでぶつくさ言うだけだから、何をしたって構わない❣ いや~こんな楽ちんなことってあります? どうもありがとうございます。

 

で、それがイヤなら、政治家に、国民みんなを平等に考えてもらうため、国民みんなで選挙に行きましょう、という理屈が成り立つ。

 

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とはいえ、強制的に選挙に行かせるのは、上記のとおりろくでもない結果になる。どうしたら?


俺が提案したいのは「1回投票に行かなかったら、次から2回の投票権剥奪」という制度。

人は、無理やり与えられたもの、当然の権利として持っているものにはあまり価値を感じないのに、その権利を奪われた時には大きな損失として感じるというもの。

 

与えるのではなく、取り上げることでその大切さに気づかせる。

これは心理学的にも理にかなっている。「こち亀」の主題歌でもあったでしょ、「無くして気がついた、バカな俺だから」って。

 

ここで、投票権に全く価値を感じず、奪われたってどうってことないって人のことは、もう放っておく。それが彼らの選択なのだから何を言ったって仕方ない。

 

他方で、政治に関心がないわけじゃないけど、実際に投票に行く価値を見いだせない人たちについては、この制度を活かすチャンスだ。彼らのモチベーションを少しだけ持ち上げることで、政治の質を上げるのに資する投票を促すことができるというわけ。

 

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この「投票に行かなかったら投票券喪失システム」によれば、次の選挙からは、以下の3つの有権者に分かれることになる。

 

1.「本当に本当に選挙に興味なくて、政治なんかどうなってもいい」という人は、無理やり選挙に行かせてもろくなことにならないから、投票権が無くなってそれでおしまい。これは残酷な話ではない。彼は投票権を持っていても、持ってなくても実質同じことだからだ。


2.普段は選挙に行かないけど、「いざって時に口出せなくなったら困るな」くらいの関心がある人は、その権利が奪われるのが嫌だから選挙に行こうとする。この制度で増やしたい投票率はこの層だ

そして彼らはそれなりに政治に関心はあるので、それなりに政治家の政策を調べてから投票すると見込まれる。


3.普段から選挙に行く人は、当然選挙に行く。彼らも放っておいたら良い。

 

 

こういう感じで、基本的には2.3.の人たちだけが選挙に行き、70~80%くらいの投票率で緩やかに続けていく民主主義がいいと思う。

 

もちろん政治家はこんなこと言えないから、今回俺が言ってみた。


俺は選挙権者になってからすべての選挙で投票に行ってるけど、Twitterで見かける「選挙に行かない奴はクズ」みたいな運動もなんかな~と思ってるんだよね。

 

それでも「たとえ何も考えなくても、投票に行くだけで価値がある」と言うならば、それはそれで意見としてはアリだけど。