こんな賃貸物件借りて失敗しました(前編)

ちゃんとした家に住んでるかい?

 

前回の「引っ越し」に続いて、今回は「賃貸物件の選び方」について述べる。

 

物件の選び方について述べるなんて言うと、俺が何かの評論家や、あるいはSUUMO自身かと思われるかもしれない。

でも、俺は不動産屋やあのマリモの妖怪ではないし(誰か俺に教えてくれ。あいつは一体なんなんだ)、むしろこれまでの引っ越しでは後述するようによく考えずに決めたせいでありとあらゆる失敗をしてきた。

 

なので、今回はこれまでのそうした失敗をすべて聞いてもらうことで、みんなに「自分の時はここに気をつけよう」「こんなとこも見たほうがいいのか」「なるほどな、壁に大きなヒト型のシミがあるような部屋は避けた方が””」だとか思ってもらい、自分たちのお部屋選びに役立ててもらうことを目的としている。

 

そのため、例えば各部屋の説明時には「1件目の引っ越しは●●に失敗しました。注意すべきは木造って木ってくらいだからすごく勢いよく燃えます」など、特に失敗したポイントを記しているので参考にしてもらいたい。

 

 

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【1軒目】

築  :10年

間取り:1K(リビング10畳)

交 通:職場へ徒歩10分

その他:ウォークインクローゼット、追い焚き、独立洗面台、オートロック、ガスコンロ3口

 

  • 失敗のポイント:無駄にオーバースペックすぎて失敗

 

俺が一人暮らしを始めたのは社会人になったのと同時のことで、そのタイミングでは会社の用意した社宅(という名の独居房)に引っ越したことは前回書いた。

また、その余りにどうしょうもない居住環境に耐えかね、暴徒と化した居住者達が次々と社宅に火を放ったことも当時の報道のとおりである。

 

で、そうした社宅から半年で抜け出した俺が次に住んだのが、職場からかなり近い場所にある賃貸マンションだった。

冒頭の部屋のスペックを見てお分かりの通り、20代前半の独身男性の一人暮らしにしてはやたらと好条件で、埼玉県だったこともあって毎月の家賃こそ7万円台で済んだものの、明らかに無駄に豪華な部屋だった。

 

まず、同居家族もいないのに追い焚き機能が絶対に不要だった。

なんとなく、自動でお風呂が沸いてくれて、更には温め直してくれる追い焚き機能は非常にありがたいものだと思われるが、お風呂のお湯ってすぐ溜まるし(自動化する恩恵が意外なほど少ない)、結局お湯は使い回さないし、そして重要なこととして、夜に彼女を泊まらせて「先にお風呂はいってこいよ♥」「俺もすぐ後ではいるよ♥」「なんと言っても追い焚き機能があるからな♥」「いやこの機能はすごいぞ♥」「割りとぬるくなっていても5分程度で・・・♥」「さすが日本の家電メーカーCORONAの・・・♥」などという甘美な夜を過ごしたこともなし。

独身は追い焚くな。これをキーワードとしたい(女性はまた、事情が違ってくるかもしれないけれど)。

 

また、10畳のリビングも広すぎて、ここへ住んでいた2年間を通じて一度も踏まなかった床があるくらいだ。 家賃というものは部屋の広さに対して支払っているところもあるから、その床の分については完全に毎月家賃を捨てていたことになる。

 

なぜそんな無駄に豪華な環境を求めたのか? 

これまでの社宅生活で抑圧された反動といえるかもしれないが、今の自分の生活からいって、どの程度の広さが必要なのかまったく理解できていなかったことが挙げられる。4畳半で過ごしていた荷物を持ち込んで、なにもない10畳のリビングにぽつんとお布団を敷いて寝た時は、小学校の頃に体育館の真ん中で寝転んでみた時のことを思い出し、ちょっと寂しくなってお母さんに電話しそうになった。

 

単純に「広けりゃ広いほうがいい」と思いがちな物件選びだが、その広さに対してお金を支払っていることを忘れてはいけないぞ。

 

 

【2軒目】

築  :15年

間取り:1K(リビング7畳)

交 通:職場へ徒歩13分

その他:独立洗面台あり、ガスコンロあり、崖あり

 

  • 失敗のポイント:物件の周りをよく調べていなくて失敗。

 

前回書いたが、弊社では転勤することが決まってから引っ越しまでの時間的猶予が1ヶ月程度しかない。

だから、上司から転勤する旨を告げられたら、その日から即座に物件選びを開始しなければとても間に合わない。間に合わないとどうなるか? 会社の近くの公園の木の上に、丈夫な枝を丁寧に結び合わせた家を自分でつくらなければならなくなる。

主に亜熱帯地域で住む人たちがそうした生活をしているのをテレビで見たことがあるが、彼らもまた賃貸物件を選ぶ時間が足りなかったのだ。

 

24歳の頃、俺は埼玉県から神奈川県への転勤を命じられた。

いくつかの目ぼしい間取りの物件をネットで見つけたのだが、転勤することの大変さが分かっていない俺は「まあ何かのついでに神奈川へ行った時に現地確認しよう」などとグズグズし(埼玉からであれば1時間程度で行けたものを)、ついに【今日決めないともう間に合わない】という日にはじめて現地の不動産屋へ行ったのだった。

夏休みの宿題を最後の日にやるのは勝手だが、そういう者には相応の死が待つばかりだ。

 

俺が実際に見に行った部屋は、間取りこそネットで確認していたとおりのものだったが、ネットでは分からなかった問題がひとつ。

その物件を取り囲むようにして大きな崖が切り立っていたんだ。

ちょっとした隕石が落ちたあとのクレーターを有効活用して建築した物件でございますみたい感じで、昼間でも夜のような部屋の暗さだ。

どうりで部屋の広さに比べて家賃が安いわけだ。

 

もちろんネットの広告には「ガスコンロあり、オートロックあり、四方に崖あり」とか絶対に書いてないから、こんなことになっているなんて想像もしてなかった。こんな谷底に住むなんて俺はもののけ姫じゃねえぞまじで。

 

「わたしはもののけプリンセスではありません」

そのように不動産屋に戻ってから抗議したものの、前述したように俺はその日のうちに物件を決めないといけなかったから、結局、俺はその崖底の地でアシタカとともに2年間を過ごすこととなった。

 

不動産屋のウェブサイトからでは物件の周りがどんな地形になっているかはわからない(これはGoogleマップでも同じこと)。従って、必ず自分の足で出向いて確認するのが大切だ。

このような四方をもののけの崖で囲まれている状況なんかは言語道断だが、急坂や、大通りの信号、駅前の風俗街なども日々のストレスとなる(毎日客引きされて帰宅するのは面倒だぞ)。

 

さらに言えば、不動産屋で内見をお願いした場合、その不動産屋から物件までは車に乗せていってもらうことが一般的だと思うが、その部屋に決める前に、必ず一度は自分の足で物件から最寄りの駅まで歩いてみたほうがいい。

最寄りの駅まで徒歩20分の道のりでも車だとあっという間で「なんとかなるかな~w」とか思ってしまいがちだ(自転車で通うことが前提ならば別だけど)。

 

とはいえ、そういった難点のある物件は相応に家賃が安い場合が多いので、それが自分にとっては許容できることであれば狙い撃ちする手もなくはない。

 

 

【3軒目】

築  :8年

間取り:1K(リビング8.9畳)

交 通:職場へ電車40分(駅まで徒歩5分)

 

  • 失敗のポイント:天気の悪い日に内見をせず失敗。

 

これまで失敗ばかりの引っ越しを繰り返し、俺にはもう賃貸物件を選ぶセンスがない、ヘタな物件を選ぶよりその辺のドブの上に藁でも敷いて寝ていたほうがお金も溜まって良いんじゃないかと思い、せっせと藁を収穫していた矢先、またも転勤に伴う引っ越しが決まった。

 

今回も時間的余裕が無かったものの、引越し先に考えていた場所が千葉県と俺の地元だということもあって、それなりにすぐ良さそうな物件を見つけ出すことが出来た。また、同じ失敗をしないよう、今度は念入りに内見も済ませた。

 

物件自体も新しく、ほどほどの広さで(独身ならベッドや本棚があろうと8畳ありゃ十分だ)、何の不満もない。もちろん崖もない。

深夜でもうるさい犬はいるけれど(近所からも苦情が集中しているのか、家のあらゆる壁に【ペットしつけます】の広告がガムテで貼られていて凄まじかった)、今度こそ良い部屋を見つけることが出来た。入居後、はじめて雨が降った日まではそう思っていた。

 

その日、俺がいつものように洗面所に行くと、なんだかとても下水臭い

どうも洗濯機の排水口まわりから臭ってくるようだ。

パイプが汚れているのか、俺が家だと思って住んでいるのは実は幻覚で本当はドブの上に藁をしいて寝ているのかどちらかだと思って(ちょうど忙しくなった頃なのでその可能性は十分あった)、臭いの元の排水口へ専用の洗浄液を2ボトルくらい流し込んだが改善せず、きっともっと下層の臭いがそのまま上がってきているんだろうと思われた。

 

結局、消臭剤を何個も洗面所へ設置することで多少マシになったものの、比較的新しい物件であるにも関わらずこうした隠れた難点があることを知り、結構ヘコんだ。やっと理想の部屋を見つけたと思ったのに実際はドブの上だよ。

 

この失敗を回避するにはどうしたら良かったんだろう。

今思えば単純で、かつ、それなりに一般的な方法がひとつある。雨の日に内見に行けばよかったんだ。

 

通常、不動産屋のウェブサイトで掲載されている写真は、とても天気の良い日に、一番日差しが差し込む時間に、一番綺麗な場所を撮影したものだ。

これだけを見て綺麗で良い部屋だと思うのは、四方八方からレフ板を当てられたうえ、写真データそのものも原型を留めないほどフォトショップで修正しまくったアイドルの写真集を見て「この子は肌が綺麗だなあ^^ よーし今日からこの子を推しにするぞ♪」などと思うのと同じくらいおめでたい。

 

従って、その物件の隠された欠陥を見つけるためには、天気の良い日はむしろ避け、逆に「おんめぇこの豪雨でよく来たなあ!」などと不動産屋の人がみんなこっちを見るくらいの悪天候の日に内見をするのが良かったんだ(不動産屋はあらゆる天気の日に営業しているブラック業界だから心配しなくてよい)。

 

そうすれば、排水口などの水回りの臭いや湿気のほか、想像を超える部屋の薄暗さ、壁に浮き出てくるどう見てもヒト型のシミ(めっちゃ嫌だな~)など、晴れの日には決して気がつくことが出来なかった情報がどんどん手に入る。

裏を返すと、天気の良い日に得られる情報はとても限定されたものだ。

 

人間でも同じことで、良いことがあって機嫌が優れている時に見せる表情は、その人のとても限定された一部分に過ぎない。上手くいかない時、焦っている時、怒っている時に見せるその人の態度のほうが(これからその人と付き合う上で)本来はちゃんと見ておいたほうが良いところだったんだ。

 

  • 失敗のポイント:通勤電車の状況をリサーチしなかった。

 

なお、この時の引っ越しにおける失敗はこれにとどまらない。

これまでに住んだ部屋は、いずれも通勤が「会社まで徒歩」であったように、俺は社会人5年目まで電車通勤というものをほとんどしたことがなかった。

従って、朝の通勤ラッシュ時の地獄をナメていたんだ。

 

朝の通勤ラッシュについては、社会人の読者みならず、学生でもその地獄ぶりを毎日味わっている人が多いんじゃないかと思う。

江戸時代の人に、「地獄絵巻」と「通勤ラッシュ時の快速電車の写真」の両方を見せたうえ「浄土宗の教えに背いて落ちることになる無限地獄ってどっちだ♪」と尋ねたら、100人中100人ともが快速電車を指さして全身を震わせるほどの地獄だと思って良い。

 

俺はその家から会社まで、朝8時の快速電車に乗って通っていたのだが、1日の疲労の半分は朝の通勤によって生じていた。

物件を選ぶ上で、どの電車を利用することになるのかについても、部屋自体の環境と同じくらいに重要なことだったんだ。

 

でも、電車の良し悪しなんてどうすればわかるんだろう。

例えば、日本の電車の混雑率の調査結果などはウェブに出ていたりするから、これを参考にするという方法はあるだろう。区間にもよるが、東西線総武線横須賀線南武線東海道線などがブラックリストの常連だ。

 

あるいは、電車の遅延情報をお知らせしてくれるアプリがいろいろあるから、自分が住みたいと思っている部屋の最寄りの駅(路線)を試しに登録してみる。

こうすることで、自分が利用したい電車の、自分の利用したい時間における遅延状況などを毎朝入手することができる。

で、その結果、毎朝のように「お客様混雑で遅延」「人身事故により運転見合わせ」「線路に逃げ出したセーラー服のおじさんを確保するため運転見合わせ中」なんていうプッシュ通知が鳴り止まないような場合は、その地域を避けたほうが無難だ。

 

とはいえ、実際には上記のような路線を完全に避けることは難しいだろう(そもそもみんな避けられないから混むんだ)。

それに、今は各路線が複雑に絡み合っていて、1つの路線の遅延がその路線と接続している他の路線にまで影響を与えるから、実際問題として朝に(上り)電車を利用するならば、大なり小なりの電車トラブルは避けようが無いだろう。

 

その場合は、とにかく快速が止まる駅を避けるだけでもだいぶ楽になる。

この国の人たちは、なぜか本当は行きたくもない会社にできるだけ早いスピードで着きたがるから、各駅停車の倍くらい快速が混雑している(きっと快速電車のストレスを許容してでも、朝は長く眠っていたいんだろう)。

 

それに対し、各駅停車は(空いているとは言わないまでも)快速に比べれば電車の中のほうまで入っていける場合が多い。混雑した電車でもみくちゃになるのはほぼ乗車口の周りだけなので、つり革のある中のほうへ入れば意外とストレスにならずに済む。

 

このことから、上記した「快速が止まらない駅」を最寄りにするほか、「許容できるだけ東京(や都市圏)から離れた駅」、「始発(あるいはその次の)駅」を選ぶといい。

 

特に、快速が止まらない駅は家賃も控えめだからダブルで良い。

その分、快速の通過待ちや、うっかり快速に乗ってしまって自分の家を情けなく見送る(あっこれ快速だ現象)などの不便は生じるが、毎日もみくちゃにされることのストレスに比べればささやかなものだ。

 

そもそも、都心における各駅停車と快速電車の差なんか(快速の通過待ちがあったとしても)20駅弱でやっと10分少々の違いなので、そんなら10分早い各駅停車に乗るようにした方が生活全体のクオリティが向上するだろうと思われる。

 

 

後半へ続く。

 

だいぶ長くなってしまったから、ここまでを俺の引っ越し失敗歴の前半とし、後半はまた後日の更新で述べる。

とりあえず、ここまでの「失敗ポイント」を並べると以下のとおりとなる。

 

  • 失敗のポイント:無駄にオーバースペックすぎて失敗

           →無駄に広いのは家賃を捨てていることと心得る。

  • 失敗のポイント:物件の周りをよく調べていなくて失敗。

           →周辺環境はかならず自分の目で見る。

  • 失敗のポイント:天気の悪い日に内見をしなかった。

           →内見は雨の日に行く。

  • 失敗のポイント:通勤電車の状況をリサーチしなかった。

           →始発や、各停しか止まらない駅を選ぶ。

  • 失敗のポイント: 家の壁をつくる木の枝が細すぎた。

           →族長にきちんと引っ越すことを伝え、これまでの感謝の踊りを舞うことで村の仲間たちから丈夫な枝を分けてもらう。

 

 

次回は残り3回の引っ越しとともに失敗経験を述べる。

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