弊社に外国人の研修生が来て、アホな英語で案内した話

 

うちの会社に、海外支社の外国人従業員が何人かやって来て、1週間ほど研修を受けることになった。
去年、俺が台湾の支社に派遣されて、海外での業務概要を説明されて帰ってくるという(こうしたものを一般的に「慰安旅行」だとかいう)ことをした、その逆バージョンだ。

台湾に行ってきたいわん - 青山日記


そういえば弊社、そんな交換留学みたいなことやってたなあ。


あの日の朝、俺が会社に行って、自分のデスクの前に突然カンボジア人とミャンマー人とインド人が座っているのを見て叫びながらひっくり返らなかったのは、あらかじめそんなことを聞かされていたからだった。

---

 

今の事業部では、俺が一番若手だということもあり、その三人の外国人は俺が面倒を見ることになった。英語もろく喋れんのにただ若いというだけで案内係に任命された俺を見ることで、日本企業のよくない風習を外国の方々に一発で理解してもらおうという趣旨だ。


いやそれにしても東南アジアの人が喋る英語わかんねー!!!

英語にもいろいろ方言があるのは知ってたけど、ほんとこんな何言ってんだかわからんもんなんだな。誰もTOEICのリスニングCDのお姉さんみたいな発音してねえ。

特にインドはひどい。ゴニョゴニョ言ううえにイギリス英語だから「(数字とかの)データ」のことを「ダータ」とか言う。こうなるとお手上げだから、想像していたよりずっと早く筆談によるコミュニケーションに切り替わったのだった。

 

-----

でもまあ、そんなしょっちゅう喋ってるわけじゃない。

とりあえずデスクに座らせて、会社のデータとか課題を与えて、それに対して適当にレポートでも書いてもらったらいい。このあたりは準備しておいたから大丈夫。

 

問題はそれ以外のフリータイムで、そのお世話も俺がしなきゃならん。

特に昼飯が困った。どこに連れていけば、そして何を話せば良いのかわからん。こういう時には言語のほかに宗教的な教養も求められる。午後何時にお祈りするんだとか、豚の肉は食っちゃだめとか。対する俺自身の宗教的教養はというと「キリストはいつも裸だから寒そう」くらいなもんだからかなり困った。もう面倒くさいから俺が勝手にローソンでおにぎりでも買ってきて渡してやろうかと思ったくらいだ。


外国人は3人で1チームとなっていて、その3人の間では会話が通じているようだったから、彼らに適当に仲良く喋らせておいて、俺はただ「こっちへ来い!」「この店へ入れ!」「喋ってないで早く食え!」などの簡単な英語だけ喋る人(刑務所の看守か俺は)に徹すれば良い。が、結構こっちへ話を振ってくる。


俺が適当に愛想笑いをして済ませたら、外国人はその愛想笑いに対しても何か言ってくるんで弱っていると、見かねた同僚が「インド人が『さっきから笑ってるけどこの話の何がおかしいんだ』って言ってるよ」だと。おいそういうの早く教えろよ!! インド洋に沈めるぞこの野郎!

 

----

同僚は少し(少なくとも俺よりは)英語が喋れるようだから、一緒に社員食堂へ行くこととした。ちなみに、社員食堂は英語で「カフェテリア」という。へ~カフェテリアっていうとなんかスタバとかそんなのイメージするよな。それが社食だっていうから日本で使われてる英語とはイメージが違うもんだ。


仲間は多いほうが良いんで、「カフェテリア行くからついてきて」と言って何も知らない部下も連れてきた。部下は「この前新作のラテが出たんですw」とか言って喜んで付いてきたのに、社員食堂につくなり何故か怒って「カフェっていうからスタバかと思ったのに!!!あと、そのインド人はなに!」だからな。

 

----

社員食堂では日替わりランチセットを注文することになった。メニューを一つずつ説明するの面倒だもんな。おまけにセットメニューだと写真がついてくるから、選ぶ外国人も、注文する俺たちも楽でいい。


「これは一体何だ?」とカンボジア人が指さしているのが「マグロのぶつ切り丼」だった。

・・ぶつ切りってなんだ? 丼ってなんていうの? と俺が困っていると、気の利く部下が「カット、ツナ。アンド ライス!」と言って、なんとなく理解してくれたようだった。

なるほどな~うまいもんだ。やっぱ文法より、単語だけでもいいから、ああやって伝えようとする努力が大切なんだ。


次に、ミャンマー人は「豚の生姜焼き定食」がお気に召したようで、これは同僚が、「ポーク、フライド ウィズ ジンジャー」と説明。


こういう感じだったら俺にも説明できそうだわい。
と思っていたところで(俺が担当の)インド人が指さしたのが「中華風あんかけ丼ぶり」だからな。なんで俺の時だけそんな面倒なもん選んでんだよ!! よくわからんから「チャイニーズ・スライム・ライス」っつってやったかんな!


------
研修では、俺が講師を担当するコマもあった。

この時はさすがに通訳の業者が来てくれたんで非常に助かった。

通訳ってほんとすごいな~。俺、相手が日本人でも時々何言ってんだかわからんのに、外国人同士の会話をその場で訳してくれるんだからこれは本当にすごい能力で、この地球がより良く回転していくことに貢献していると思う。

 

で、俺の講師のコマは、この会社の組織体制だとか、どんな専門家がいるんだとか、最終的に何を提供してるんだとかそんな(時間つぶしのような)話だった。話すことが決まりきっているうえに誰も聞いてないだろうから、楽でいい。


会社の座席表(この時のために、英語版を作っておいた)を見せて、この人は何やってて、この人は何の専門家で・・・みたいな、だいたい10分くらいでみんな寝てるだろう・・・と思っていたらこれに質問が集中して大変だった! 人んちの座席表にそんな聞くことあります!?

 

カンボジア人「女性をこんな端っこに座らせているのは差別だ。 先進国がそういうことをしちゃいけない」
俺「アイムソーリー・・・」


ミャンマー人「このチームとこのチームは作業が似ているのに、こんなに机が離れてると非効率的だから、近づけたらいい」
俺「アイムソーリー・・・」


インド人「この【◯◯~へ行く】っておかしな名前の人は何だ?」
俺「それはGo to さんと書いて後藤さんという人なんです」

----


そんな感じで結構大変だった。
でも、そんなことが1週間も続くと、何だかんだで少しずつ喋れるようになってくる。言語は学校で学ぶより一度留学したほうが何倍も身につくって本当だよな~だって死んじゃうもん喋れないと。


会社の研修では英語が喋れなくても死にはしなかったが、日本の社会人というのはこんなにも英語が喋れないんだと、外国人研修生にはかなりがっかりされたと思う。すまんみんな。次はもっと英語勉強する。少なくとも「あんかけ」は「スライム」ではないと思う。