僕らと,忘れ物との戦い

これは,病的な物忘れに苦しむ俺たちが、なんとかそれを克服するために試行錯誤を繰り返す涙の記録である。

 

  □わたしドリー。わたしね,何でもすぐ忘れちゃうの。

 

俺には度を越した忘れ物のクセがあって,子どもの頃から悩まされている。

もはや、その手の脳の病気なんじゃないかと思うくらいだ。

 

よく覚えているエピソードとして,小学生の頃にランドセルを背負わずに途中まで登校したことがある。
もう「ちょっと筆箱忘れました^^;」 というレベルじゃない。

傍から見れば「ぶらっと映画でも見てくるかな~」くらいのノリだからな。

(なお,その時は一緒に登校していた友達の「おい、お前は今からどこに何しにいくんだ?」というものすごい正論でその事実に気がついた。)

 

俺がヤバいのは、こんなことが社会人になっても続いていることだ。

よくあるのは社員証を忘れること。

社員証なんて何で忘れるんだ??と思うだろうが、俺たちが物を忘れる〔理由〕というのは基本的に存在しない。

とにかく気が付いたら物がなくなり、完全にランダムな場所から突然現れるのだ。

お前たちは自転車の鍵が食器棚のお皿とお皿の間から出てきたことがあるか?

あるという人だけが俺たちに石を投げなさい。

 

で、うちの会社は、社員証がないとセキュリティゲートが通れないから、受付に「忘れた」って言って、代わりの「入館証」みたいなのを貰うことになる。

その時の申請用紙に「弊社をご訪問された理由」みたいな欄があるんだが、そこに「お仕事」と書くのが実に切ない。

 

最近公開されたディズニーの映画で,「ファインディング・ドリー」ってのを知ってるだろうか。
このドリーというのは俺と同じで、いろいろ物忘れをしやすいという特徴をもったキャラクターなんだが,こいつがとても明るい口調で「わたしドリー♪ わたしね,何でもすぐに忘れちゃうの♪」とたびたび言うんだ。

そんなお茶目なドリーにひとつ言っておきたい。

お前社会人になってからもそうだと割とヤバいことになるぞ。

 

 □俺たちはよくもまあまっとうに働いているもんだ。

 

いま社員証を忘れたって話をしたけれど、つい先週もこんなことがあった。

次の日に出張があって,会社から支給された携帯電話を必ず持っていかなきゃいけない。
この時点で嫌な予感するよな!

でも,大丈夫だ。
そこはリアル回数で100万回は忘れ物をしている俺だから,前日のうちにカバンに入れておくという,俺達ができる中で一番良い行動をした。
実にえらい。人は成長するのだ。

 

で,翌日の朝になってから,俺は急に,一晩中カバンに入れておいた携帯電話の充電が気になってきた。

せっかく忘れずに持って行っても,充電が無くて使えなかったら意味がないからな。


そんなわけで、カバンから取り出して見てみると,案の定,残りの充電が30%程度しかなかった。
30%くらいでも足りることは足りるんだが、念のためと思ってカバンから取り出して,家のコンセントに突き刺して充電を始めた。

 

頭のいい読者のことだから,この後どうなったか大体予想が付くだろう。


その携帯電話をコンセントに突き刺したまま放置して家を出たことに俺が気がついたのは,既に出張先に向かう電車の中だった!

 

 

このエピソードの中で、俺がとった愚かな行動はいくつあるだろう?

たくさんありそうだ。


まず,俺たちは,必要なものを一度カバンに入れたら,何があっても余計な事をするな! これが一つ目だ。
それから二点目で,致命的な問題として,俺たちは脳みその変わりにスパゲッティを入れて生まれてくるべきではなかった。

 

□死ぬしかない。

 

なぜ,こうなのだろう。
やはり確認が足りないのだ。それに尽きる。

 

俺たち物忘れボーイズは,まあカッコよく言っても若年性健忘症というやつなんだろうが,すぐに物を忘れるくせに,何かを確認するという作業をほとんどしないんだ! 


と言うよりも、正確には,何かを確認しなきゃいけないことすら忘れているのだ!

 

同じようなことが昨日(2月7日)もあった。


うちの会社では,たまに著名人を招いた勉強会が開催されることは前回書いた。

で,今日会社に招かれた人はちょっと好きな経済学者で,その人の本も持っていたからサインを貰おうと思い,その本とサインペンを用意した。

 

その人の本と、サインペンを手提げ袋に入れて・・・大丈夫だ,忘れ物は無い。
ただちょっと,サインペンのインクがちゃんと出るかどうかが気になったんだ。

そういう変な確認だけはきちんとしてしまうのが俺たち忘れ物ボーイズの難儀なところだ。

手提げから取り出して,適当な紙にちょっと書いてみる。ああよかった、大丈夫だ。


この後の展開はもうみんなはわかるよな。

当然,そのサインペンはデスクの上に置きっぱなしで、会場に持っていき忘れている。

 

読者からしたら「わざとやってんのか」と思だろう。

それも無理はない。俺たちの頭の中には脳みそのかわりに増えるわかめが入っているんだ。

俺はもうだめだ。もう何もできることはない。

 

いや,ある。ちゃんと確認すればいいんだ。
だがどうやって? 確認することも忘れてしまうんだから。

 

□おはようございます,すぽんじさん。

 

最近では,たとえ物忘れをしたとしても,すぐに思い出せるように,自分のTwitterのニックネームをメモ帳代わりにしている。
これはどういうことか?


例えば,実際にあったことだが「食器を洗うスポンジ」を買って帰る必要があるとする。
改めて言うまでもないが,俺たちは今日これを買って帰ろうと決めた物を,夜にちゃんと買って帰る確率はゼロだ。

 

そこで,ヒマさえありゃ見てるTwitterの自分のニックネームを,その買って帰る物の名前に設定しておくと,Twitterをひらくたびにその事実を思い出す、という画期的な方法がこれだ。 

 

Twitterのフォロワーからすると、いきなり「すぽんじ」とかいう妙な名前のやつから「おはよー^^」みたいなリプライがくるとギョっとしてブロックしてしまうようなんだが,こればかりは仕方がない(たまに律儀に「おはようございます、すぽんじさん」と応えてくれる)。


俺のフォロワーにも,自分の名前を「印鑑レポートシフト表」とかいうニックネームにしてる人がいた。お前も結構大変な生活してるな!!

 

□お母さんごめんなさい。

 

マジメな対策もある。

例えば、毎朝家を出るときに,俺たちに「ちゃんと持ち物は確認したか?」と思い出させてくれるようなものを用意したらいい。

 

俺たちが学生の頃,これをしてくれていたのはお母さんだった。
家を出るときは必ず「あんたちゃんとハンカチ持った?!」などと叱ってくれたものだ。


だが,忘れ物ボーイズはそれに対して「あーはいはい あー持った持った」などと,愚かな人間にありがちな,人の忠告をまるで無視するという行動をとり続けてきていた(そして忘れ物をし続けてきた)。

 

この馬鹿者どもは,いまさら家にお母さんがいたとしても行動を変えることなど1ミリもないだろう。
やはり死ぬか?

バカは死して神と同一の存在となり、やっと苦悩から解放されると聞いたことがある。

 

□物忘れ防止アイテム

 

死ぬのは何か嫌だというわがままな連中のために俺がオススメしたいアイテムが1つある。
それが「ホワイトボード」だ。
東急ハンズなどの雑貨店に行くと,小型で,壁に掛けられる物が1,000円くらいで売られている。


これを玄関にかけておく。
するとどうだろう,毎朝出勤するときに持っていくものがすべて分かる!

非常に有用だ。なんでもっと早く買わなかったのだろう。


ちなみにこれは俺の家の玄関だ。

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「財布」だの「定期券」だの,普通の脳みその人たちからしたら「それ忘れます?」ってものばっかり書いてあるのに衝撃を受けるかもしれない。

 

だけど、俺は頻繁に

「あ,今日は定期券がないから会社まで11時間かけて歩かないと・・・」とか
「あ,今日お財布忘れたから,お昼ご飯は公園の木によじ登って木の実を探さなきゃ
なんてことをしでかしている。

 

もう,全部だ!
忘れたら困るもの,全部ここに書くのだ!

 

□ホワイトボードの敗北

 

ホワイトボードを導入してからというもの,俺はついに物忘れを克服したかに思えた。

 

だけど・・・しばらくすると,また財布を忘れるなどして、お昼に公園の木によじ登る生活が再会していることに気がついた。

いったいこれはどういう事なんだろう?


いろいろと考えてみたんだが,どうも,ホワイトボードを置いてから半年もたつと完全に風景と同化してしまって,俺自身が家を出るときにホワイトボードを全く見ていないことが分かってきた。

 

これには当初、俺もヤバいと思って,ホワイトボードをちゃんと見るようにと大きく「見て」と書いてみた。

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が,そもそもホワイトボードを見ていないのに,そのホワイトボードに「見て」と書いたとしても全く何の効果も無いということが判明した。
(我々がこの結論に達するまで2ヶ月を要した)


そこで,今ではこのように,ドアののぞき穴のところに紐を引っ掛けて,ドアを開けるときには必ず見ざるを得ない感じで使っている。

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本当に涙ぐましい努力と言うほかない。

家にホワイトボードを備え付けて,持ち物を管理しているんだって話をすると必ず「几帳面だね! 血液型A型なの?」と聞かれる。


血液型は増えるワカメ型だ。

増えるワカメが脳みその代わりに入ってるんだ俺は!!!