夜中3時にパンを焼く男の話

タイトルとあんまり関係ない話から始めるけれど,俺は普段,家でコーヒーを飲む時は,Panasonic製のでかいコーヒーメーカーを使っている。

 

コーヒーメーカーは,よく「買わなきゃ良かった家電」ランキングの上位で見かけるモノだけど,俺はすごく満足しているし,社会人になった時に買ってから8年間も故障せず動いている。素晴らしいものだ。
ありがとうPanasonic,ただ洗うのが面倒なので,できればこいつを洗ってくれる奴隷も一緒に売ってほしいと思う。


そんなコーヒーメーカーにもダメな点が2つ。
ひとつは,さっき言ったようにいちいち洗うのが面倒くさい。

もうひとつは,豆を挽く時の音が結構うるさい。
静かな早朝にこいつを動かすと,同じ賃貸マンションの住人を一人残らず叩き起こすくらいの音がする。
仮に俺がロシア征服をたくらんだナポレオン並の傍若無人な王だとしても,ちょっと「さすがにやべえな…」って思っちゃうくらい音がでかい。


豆ではなく粉を買ってきてセットしたら解決するんだが,やっぱり挽きたてを飲みたい場合に問題となる。


で,その音を消すためにいろんなことをやってみた。
コーヒーメーカーごと戸棚の中に入れて,そこで豆を挽かせてみたり,段ボール箱をかぶせてみたり,自分の耳を両手で塞いでみたりと色々なことだ。

※最後のやつはかなりの効果があったものの,自分が聞こえなくなっているだけで,「現実逃避」という解決方法らしい。


その中で最も効果があり,簡単だった方法は,「毛布をかける」,これだ。
布というものは本当に音をよく吸収してくれる。
電車の中で大声で喋っているオバちゃんも,頭から毛布でぐるぐる巻きにしてやったらかなり静かになると思われるほどだ。


朝のコーヒーが飲みたい時,前日のうちに豆と水をセットしておく。

そんで,翌朝目覚めたら,自分がそれまでかぶっていた掛け布団をそのまま台所まで持って行き,コーヒーメーカーを包んでからスイッチオン。

出来上がったら毛布はそのまま自分でかぶって寒さをしのぐ。
コーヒーとともに迎える,美しく優雅で特別な朝を君にも届けたいくらいだよ。


この「うるさいものに毛布かける作戦」は他の家電でも応用した。
それがホームベーカリーだ。
こいつも世間の「買わなきゃよかった家電」ランキングでいっつも上位争いをしている家電なんだが,これには少し同意する。
最初は普通の食パンのほか,抹茶パンとかチョコレートパンだとか,あるいはウドンとかを捏ねて作っていたんだけれど,まあ飽きますわな365日食べてたら。今では全く使っていない。


で,このホームベーカリーも,パンをこねている時にモノ凄い音がする。
静かな早朝にこいつを動かすと,同じ市内の住人を一人残らず叩き起こすくらいの音がする。

更に問題があって,コーヒーメーカーはスイッチを入れてからだいたい10分後までには出来上がるんだが,パンというものは,捏ねたり発酵させたり焼いたりと色んな手順があって,スイッチを入れてからだいたい3時間後に完成する。

そして,俺は朝の6時過ぎに起きたタイミングで,焼きたてのパンが食べたい。

この2つの条件が揃った時に,あるひとつの恐ろしい結論が出る。

俺は夜中の3時頃にいったん目覚めて,ホームベーカリーのスイッチを入れ,あのけたたましい音を周りじゅうに響かせながらパンを捏ねなきゃならんのだ!!


俺,ことによっちゃ「夜中にパンを捏ねた罪」で逮捕されるかもしれん。おそらくだが判決は死刑だろう。

 

これに対して,「いや,あらかじめたくさん作っておいて,冷凍しておいたらいいんじゃない?」とか言った同期入社の友達は,パンをこねる用の木の棒で何度か殴打のうえ殺害し,毛布にくるんで東京の海に沈めた。毛布とは実に様々な用途に使えるものだ。
あのな,せっかくパンを捏ねて,焼くことまでしてくれるマシーンを買っておきながら,そのパンを冷凍したらちょっとガッカリだろ!


というわけで,まず「夜中の3時にいったん起きる」のは良いとして(美味しいパンのために犠牲はつきものだ),パンを捏ねる音をどうにかしなきゃいかん。

そこで毛布作戦だ!

だが,それも問題で,俺は夜中の3時にホームベーカリーのスイッチを入れてから,再び布団に戻って寝なきゃいかん。
だが,毛布がない!! どこへ置いてきた!? あ,ホームベーカリーをそれでぐるぐる巻きにしてきたんだった!

以上のことから,ホームベーカリーに毛布を奪われた俺は,夜中の3時から明け方の6時過ぎまで震えて過ごさなきゃいかんことになる。
君たちは今までに一度でも聞いたことがあるか,夜中にパンを焼いて風邪をひいた人の話を。


俺はPanasonicにひとつお願いしたい。
ホームベーカリーと一緒に,こいつに巻きつけるようの毛布も発売してほしい。

 

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