自己啓発書(ビジネス本、勉強術)の選び方について~こんな本の助言は聞くな~

 みんな、仕事してるかい。

 

入社前の新社会人に対して「ああしたほうがいいよ」「こうしたほうがいいぞ」と先輩目線でアドバイスを送る人は星の数ほどいるんだが、その後、仕事が辛くなってくる半年後や、入社2年目の人が抱える現実の問題について助言する人はあんまりいないよね(だから、俺はそういう人になりたいと思っている)。

 

で、そういう時に、悩んだ社会人がしばしば頼るのが、「○○仕事術」というタイトルがついた「ビジネス本」というやつ。

これが空前の大ブームで、本屋に来てみると、だいたい書棚の1コーナーから1コーナー半くらいを「ビジネス本」だの「自己啓発本」だのが占めている。

みんな何かしらに悩んでいて、誰かに「それはこういうことだ」と教えられたいんだな。

 

俺も、社会人2~3年目の頃、この手のビジネス本を結構読んでは勇気づけられてきた。

が、その中には「こんなどうしょうもない本を買う金でチョコラBBでも買ったほうがよっぽど良かった」と思えるシロモノも多くあった。自己啓発書はとりわけ「使える」ものと「どうしょうもない」ものの差が激しいので気をつけてほしい。 

なので、今日は、こうしたビジネス本を中心とした「自己啓発書」の問題点と、良い自己啓発書を選ぶ際のポイントについて説明する。

 

 

 

「良いビジネス本」と「どうしょうもないビジネス本」の違い

 

単刀直入にいうと、仕事に使える良いビジネス本というのは、「どうすれば良いのか」が簡潔に書いてある本だ。逆に、「どうしょうもない」ビジネス本は、「○○をしろ」とだけ、著者の個人的な体験談をもとに延々と書かれている。

 

これだけだとイメージし辛いので、ビジネス本のタイトルに置き換えてみよう。

 

・どうしょうもないビジネス本:週に5回ササミを食うだけダイエット!

・使えるビジネス本:週に5回でも飽きない、簡単ダイエットササミレシピ集

 

両者にはこうした違いがある。

 

・・・仕事のやり方(仕事に限らず、ダイエットのやり方でも、恋愛の方法でもなんでもいい)について俺たちは知りたがっている。

で、そのために本を読むのであれば、それは、実際に明日からの仕事(ダイエット、恋愛、お金儲け)について、どのようにしよう、という問いかけに答えるものでなければならない。

 

 ところが、「どうしょうもない」ビジネス本というのは、ただ「これをやれ」とだけ書いてあって、「実際にそれをやるにはどうしたらいいか」がまるで書かれていないものが大半を占める。

立ち読みしながら「で、それって、実際どうしたらいいんですかね」と頭の中で唱えながら読む。それに答えうる内容でなければ、実行することは不可能なので、読む価値はほとんど無いと思って良い。

 

どうしょうもないビジネス本の書き方

 

「どうしょうもない」ビジネス本の内容や構成は、面白いくらいに似通っている。

まるでツイッターのコピペのように、全く同じテンプレで書かれていると言っても過言じゃない。

 

大体が精神論と、著者の(たまたま上手くいった)経験談や自慢話、それから、実際にどうすれば良いのかまるでわからない「方法論」で占められていて、これを最後まで読んだとしても「じゃ、僕明日から実際何をどうしたらいいんですかね」という一番大事な疑問は決して解決することがない。

 

そうした本をすぐに見分けられるよう、以下に例を示そう。

 

あなたはオフィス機材等を販売する営業員で、電話で営業をかける、というテーマとする。(ちなみに、この例はどこかの本からの抜粋というわけでなく、俺がいろいろとビジネス本を読んだ中で「だいたいこんな感じで書いてあった」という経験則から作成したものだ。)

 

どうしょうもない本の例

 

1.一日に100本、それも毎日、私は電話をかけ続けた。怒鳴る客もいたが、めげることは無かった ・・・(まず、著者の個人的な思い出話が始まる。これに例外はない)

 

2.そこで感じたことは、そうして断る客にも、必ず【求めていること】【不便だと感じていること】があるということだ ・・・(当たり前のことをさも「すごい気付き」のようにして語る)

 

3. そこで私は、断られる中でも、そうした「隠れた」ニーズに着目した話題を出してあげることで、その場では断られるものの、今後その人に何かあった時に「あ、これはあの人に聞いてみよう」という信頼関係を作ろうとしたのである ・・・ (実際にどうすればいいのかまるで分からない方法論が展開される)

 

4.このようにして私は、気がつくと入社2年目にして営業成績ではトップを誇っていたのである ・・・(再び著者の個人的な成功談(更にいうとだいたい真偽不明)。

 

本屋に来て、買おうと思っているビジネス本を開いてみて、適当な項目を開いてみる。

それが上記のようなパターンで記述されていたら絶対やめといたほうがいい。その金でチョコラBBでも買ったほうがよっぽど仕事できるようになる。

 

使えるビジネス本の例

 

冒頭でも述べたように、使えるビジネス本というのは、「実際どのようにすれば良いのか」が記載されている本だ。

具体的には

 

1.何をやればいいのかが書いてある(多くても3つまで)

2.誰にでも当てはまることが書いてある

3.「これはしてはいけない」が書いてある。

 

こうしたチェックポイントがある。

以下説明しよう。

 

 

1.何をやればいいのかが書いてある(多くても3つまで)

 

  俺たちは、俺たち自身の生活の中で、現実の問題に直面している。そして、現実の問題は、現実的な方法によってでしか解決できない。これは声が枯れるまで主張しておきたい。

ところが、どうしょうもないビジネス本は、このあたりが上手いことボカされていて、現実にどうしたらいいのかがよく分からないようになっている。理由は単純で、「もしこの本を読んで失敗しても、それはあなたのやり方がおかしかったから」と逃げる余地を残したいからだ。

 

上記の電話営業の例でいえば、「2.」で、「ニーズに着目した話題を作れ」だの、「信頼関係を築け」だのと、一見まともそうだけど、実際には何をどうしたらいいか分からないことばかりが書かれている。 大体のどうしょうもない本はこのパターンに該当する。

 

逆に、良い本はというと、具体的に「こうしろ」「ああしろ」「こうなったら諦めろ(重要)」が書いてある。

例えば、

 

 ○ 電話で断られた後でも、必ず以下のように付け加えるようにしてください

・「お話を聞いてくださいまして、ありがとうございました」

 その後、 

 ・ 「今、オフィス業務の中で何に一番困っていますか?」

 ・ 「経費がかかって、どうにかしたいと思っていることは何ですか?」 

 このいずれかの質問をしてください

その際、

・「特に無い」

 →「これ以上話してもイメージが悪化するだけなので引き下がる」

・「○○が困っている」「○○をするつもり」

 →「他社よりもかなり安く提供できる旨を伝えた後、見積もりだけでも○日までにすぐ出せる」と伝える。

 と対応してください。

 単に「こっちが売りたいものを断られた」だけに終わらせず、お客さんが「何がほしいのか」を、こちらが知る手がかりになる場面を必ず作ってください。

 更にいうと、この質問は「ありますか? ないですか?」ではなく、「何ですか」と聞くことで、YEs,No,に終わらない具体的な話を聞くことができる場合があります(こうした問をオープン型クエッションといいます)。

 

 

・・・このように、「まず何する」「この場合こうする」「こうなったら止める」という現実の方法が記されているものは、実際に活用できるし、それに、本のつくりとして誠実だ

誠実とは、自分の言いたいことをきちんと示して、そしてそれを守ることだ。

そのためには曖昧な表現じゃなくて、「私はこう言いました」と提示している本を読んだほうがいい。

 

また、付言すると、こうした現実的な手法も、実際に生活の中で使える「数」というのは限られている。

「何か試してみて、駄目だったらすぐこっち。この場合はこう」と、臨機応変にやることを変えるのは、そりゃ理想的なことで、本に説得力を持たせるには良いのだけど、実際そんな器用なことはできない。

 使える本は「この場合、○○をする。そしてそれに集中する」と、注力する対象が絞られているものだ。

 

2.誰にでも当てはまることが書いてある。

 

「東大生の教える、東大式受験勉強テクニック」という本をよく見かける(仕事術に並んで人気なのが、この「勉強法」の本だ)。

で、こうした東大式の本(その他、京大式、ハーバード式、なんとか大学生の教える・・・的なやつ)は、基本的に学歴にビビって闇雲に説得力を感じてしまう効果を狙ったもので、あんまり読む価値はない(こうしたものを「ハロー効果」という)。

 

そもそも、こうした本を見るにつけ思うんだが、東大生の勉強法がどうして自分にもできると思うんだろうか。普通逆じゃないか?

東大や京大に入学した人たちというのは、かなり年少期から勉強の投資を受け、かつ、自らも「学ぶこと」が好きな人が多い。

そうした人たちの書く「勉強法」を、 F(x)=~の式を見るだけで脇腹に蕁麻疹の出てくる俺たちが読んで、そのとおり適用できると考えるほうが無理がある。

つまり「誰にでも当てはまる方法」ではない(そして、とても多くの場合、その著者にしか当てはまらない)。

 

イチロー式 年間260本安打を打つ打撃術」なんて本には「いやお前、そんなのイチローしか無理だろ」と思うのに、「ハーバード式 どんな企業でも結果を出す超勉強法」みたいな本は「なんとなく凄そう」と思ってしまう。

 

これは、運動については自分の限界や向き不向きがわかるのだけれど、勉強など「脳」のことになると、俺たちは何ができて何ができないのかよくわからない。だからうっかり、やれもしないことに手を出して、案の定失敗することになるんだ。俺は読者にそうなってほしくない。

 

もし買うのだったら「偏差値40~50台向け:1年間で早稲田○学部に合格する勉強法」のように、誰を対象とした、どのレベルの本なのかがちゃんと書いてある本にしよう。

 

 

3.「これはしてはいけない」が書いてある。

 

本の誠実さを見極める時に、この「○はしてはいけない」は良い尺度になる。

というのも、仕事でも勉強でも、「何かしらやれば、何かしら効果が出る」ものの方法論を売り込む際には、とにかく「何でもやらせる」ことが、最も理にかなっているからだ。

以下説明しよう。

 

 俺が最近本屋に行ってびっくりしたのは、とにかく「朝○時に起きると全部うまくいく」的な本の多いこと。

 

ちょっとAmazonで検索したもこれだけある。

 

・朝2時起きで、なんでもできる!・・・枝廣 淳子

・No.1営業ウーマンの「朝3時起き」でトリプルハッピーに生きる本・・・森本 千賀子

・「朝4時起き」で、すべてがうまく回りだす・・・池田 千恵

・朝4時起きの仕事術―誰も知らない「朝いちばん」活用法・・・中島 孝志

・朝5時半起きの習慣で、人生はうまくいく!・・・遠藤拓郎

・朝5時起きが習慣になる「5時間快眠法」・・・ 坪田 聡

 

あたしゃ何時に起きりゃいいんだよ!!!!

 

かと思えば、逆に「よく寝る」方に着目した

 

・睡眠こそ最強の解決策である ・・・マシュー・ウォーカー

 

という本が最近ではAmazonの売上で上位に来ているようだ。

 

こうした本というのは一見すると科学的に思えても、基本的には「ためしに○時に起きてみたら何か調子良かった」的な著者の感想を記述しただけのものであって、それ以上の意味はない。

だいたい、「朝2時に起きたら何でもできる」というが、そんな時間に起きれば夜中の時間が増えるのは当然のことで、やれることが増えるのは全く当たり前のことだ。

そして、こうした「○時に起きろ」の本が言いたいことが、それに集約されている。要するに「寝るな」ということだ。

寝なければ、単純に活動できる時間が増える。活動できる時間が増えれば何かしら生産はできる。その何らかの生産物をもって「うまくいく」と言っているだけに過ぎない。

 

このように、何かしらやれば何かしら効果が出るんだから、それが何であれ「○○をやりなさい」という本が溢れかえっている。そのうちどれかでたまたま成功したら「ビジネス本のお手柄」というわけだ。

こうした本は非常に不誠実だと俺は思う。

 

読む価値がある本は、その逆で、「これだけは止めたほうがいい」が書いてある本だ。

人に何かをさせるのに比べて、止めさせることは「なんでも良いからなんかやれ」の考え方とは違い、自分が勧めたいこと、主張したい理念がハッキリしている。

また、非効率・不健康がゆえに避けたほうが良いことは、「やった方がいいこと」と同じか、それ以上に重要であるにもかかわらず、「やる」ことに比べて生活に取り入れやすい(単にやらなきゃいいんだからね)。

 

読者がビジネス本を選ぶ際には、著者が「何をしろ」と言っている反面で「何をするな」と言っているかについても注目してもらいたい。

 

ただ、これも、「やめろ」自体がテーマになってしまうと、また「2時に起きるのだけはやめろ」「5時に起きるのはやめろ」「夜更かしはやめろ」みたいな事になってしまうから、通常の「こうした方がいい」という記述の中に「このやり方を実践するにあたっては、○○はしないほうがいい」と付記してある物がより好ましい。

 

より使える自己啓発書を求めて

 

今回は、俺がビジネス本や勉強術などの自己啓発書について思っていることを述べた。

その中で、使える本と、どうしょうもない本の見分け方を紹介した。

 

この記事を読んで、読者は、自己啓発書というのはインチキで下らないものだと感じた人も多いと思う。が、自己啓発書の中には、これは本当に生活に取り入れやすい、かつ、効果の高いものというのがあるから、自分なりにそうした本を探してみてほしい。

上記の区別が、読者にとって有用な自己啓発書を探す際のチェックポイントになればありがたい。

 

 

おまけ(今まで読んで良かった自己啓発書)

 

 

・ダメな議論―論理思考で見抜く (ちくま新書) 新書 – 2006/11/1 飯田 泰之

 

 著者は明治大学教授でエコノミスト飯田泰之氏。俺はこの人の信者みたいなところがあるので話半分に聞いてほしい。

 自己啓発書では「良い考え方」「クリティカル・シンキング」みたいな本がたくさんある。

 が、それって本当に良い考え方なのか? もしそうだとしても、いつも、どんな問題にでも(例えば、家でソファをどこに置くべきか?など)そんな考え方なんてできない。第一疲れる。

ならば「良いことをしよう」ではなく、ダメなものを見つけ出して、それをとにかく避けるようにしよう。そういうテーマで書かれた本だ。実用とは本書のようなつくりのことを言う。

また、自分のみならず、周りの「一見するとマトモだけど、実際はどうしょうもない」意見(まさに「ダメな議論」に付き合わずに済むようになる。

 取り沙汰される事例は経済関連のことで、とっつきづらい印象を持つかもしれないが、著者の言いたいこと自体は予備知識ゼロでも大丈夫。おすすめ。

 

 

・入社2年目のインバスケット思考~一生ものの仕事の進め方~2011/10/31 島原隆志 

 

社会人2年目くらいで、後輩も1人できた・・・そのくらいの人が会社で直面しがちな「現実的な問題」について、どう解決したらいいのか。本書ではそれら「あるある」ネタへの取り組み方について説明している。 この「模範解答」が手堅くて非常に使える。その上、この本のいいところは、ストーリー仕立てで読みやすいということもさることながら、「ダメな例」として、この本に登場するうだつの上がらない社会人2年目の人たちが、実にいろんな「ダメな考え方」を示してくれる。が、そうしたダメな考え方を、ついついやってしまう。

 

本書では、それが何故ダメなのか丁寧に解説する。「このようにしろ」と同時に「それはやめとけw」ということも述べている良書。

ちなみに、「インバスケット思考」というのは、海外のビジネス教育に取り入れられている「制限時間付きのケーススタディ~あなたはどうする?」みたいなゲームらしいんだけど、別に制限時間とかいらないんで普通に読んで良い。