以前ちょっと話題にしたけれど、むかし俺はホームベーカリーにハマっていて、パンとかうどんとかを熱心に作ってはひたすら食べていた時期がある。
ホームベーカリーというのは「捏ねる」→「発酵させる」→「焼く」までを自動的にやってくれる優れた機械で、これを使うと「ピザ生地」も簡単にできるから、できた生地にチーズとトマトを乗っけて焼いたものを食べていたこともある。どうだ意外とマメだろう。いつお嫁に行ったとしてもお前ん家でピザ焼いてやるからな。
その手の専門店にいくと、ピザ生地を作る用の粉が何種類もあって(それぞれ食感だとかが違うわけ)、それにイースト、塩、水などを入れて、ホームベーカリーに捏ねさせるとピザ生地ができあがる。
思っているよりずっと簡単で、材料も少なくて済む。
少なくて済むんだが・・・・ひとつでも入れ忘れるともちろん大失敗する。
そんな材料少ないのに、忘れる人なんているのか?と思うだろう。
それがいるんだ。
いったいどこのどいつだ、そんな馬鹿は・・ってみんなで想像してみてほしい。この俺だ。
信じられないかもしれんが、俺はよく「水」を入れ忘れた。
水を忘れるととても悲惨なことになる。
やかましい音を響かせながら、何時間もかけてホームベーカリーが一生懸命動いている。
僕らのお腹もすいている、さぁ焼きたてのパンを食べよう!と思ってホームベーカリーの蓋を開けると、粉だ!!!! 粉が単にかき混ぜられただけで何も変わってない!!
これをぺろぺろ舐めろというのか?!
パン生地つくるのに水を忘れるような、脳みそのかわりにスライムが頭に入っているような奴はこの惑星でも俺くらいなものだろうが、みんなはぜひ忘れないようにしてもらいたい。
何の話だっけ?
そうだ、ホームベーカリーでピザ生地をつくる話だった。
さっき言ったようにホームベーカリーは、粉を捏ねて生地にして、それを焼く機能までついている。
パンを焼く場合は最初から最後までそのまま入れておけばいいんだが、ピザ生地は自分で好きなサイズに平たく伸ばして焼くことになるから、ホームベーカリーがいったん生地を捏ね終わった後に取り出すことになる。
これを忘れてたり、寝過ごしたりすると、ピザ生地の味がする巨大な食パンの出来上がりだ。
それって美味しいのでは? と思う読者がいるかもしれないが、甘くないし硬いから全然美味しくないので、とても食べられたものじゃない。
捨ててしまうか、風水的に良い効果があるとか適当なこと言って玄関に置いておくくらいしか使い道が無い。
ピザ生地を作っていたにも関わらず、寝過ごしてそのままパンの形に焼いちゃうなんていう、脳みその変わりに大量の増えるワカメが入っているような奴はこの惑星で俺くらいなものだろうが、みんなはぜひ気をつけてもらいたい。
で、生地だけを取り出して、あとは自分の手で捏ねて形を作っていくんだが、これが実に楽しい!
子供の頃の粘土遊びみたいなもんで、実にストレス解消になる。
最近「大人粘土」とかいうのが売れている理由がわかるが、いくつになっても粘土遊びは楽しいんだ。
思うに人間というのは、ああいう柔らかなものをムニュムニュやるのが本能で好きなんじゃないかと思う。
ああ、生地を捏ねているだけでストレスが発散されていく・・まさにセラピーだ。
ピザ生地ってのは食べる以外にも様々な用途があるものだ。
この生地をこねこねするのがあんまり楽しいもんだから、俺はわざわざ麺棒と生地をこねる台(60センチX60センチくらい)まで買ったくらい、かなり本格的にやった。
本格的にやって・・・、そんで、ホームベーカリーに飽きた今となってはどこへ行ったかわからない。無情なものだ。
麺棒も台も木製だからたぶん森にでも帰っていったんだろうと思う。
生地を作ったら、今度はオーブンで焼くことになるんだが、このオーブンにもこだわった。
ピザ生地を丸ごと焼き上げるくらい大型で、そして火力のあるやつでないといかん。
そんなわけで、当時5万円くらいした三菱電機の大型オーブンレンジを買ってきたわけだが、そんな俺に対し「いや、一度に全部焼かないで、生地を小分けにしてちょっとずつ焼いたらいいんじゃないの?」などと、まったく意味不明なことを言い出した同僚は、ピザを捏ねるために買ってきた麺棒で殴打したうえで殺害し、柔らかなピザ生地に包んで森へ捨てた。ピザ生地というのは食べる以外にも様々な使い道があるものだ。
このオーブンレンジは、内側がザラザラとした石のような手触りになっている。
そして加熱は360度まで可能で、まるで本物の石釜でピザ生地を焼くような感じになるんだそうだ!実にすばらしい。
実にすばらしいが、・・・・・・・ホームベーカリーに飽きてしまった現在、このレンジはどうしているのだろう?
皆さん大体想像できるように、この技術の結晶のようなオーブンレンジが俺の家で主にやっていることはコーヒーを温めなおすことくらいだ。
いつの日かまた活躍することがあるかもしれないからきちんとお手入れしてある。
読者で、ピザを焼きたいけどオーブンがない、という人がいたら、生地だけもってうちにくるといい。トマトのピザにちょうどいい赤ワインを用意して待っている。